吹上沢 五月の記録 白水沢を遡行してからすぐ右から入るのが、吹上沢である。出 合は水量が少く暗い感じなので、興味はそそられる。五mの滝を 左手より越すと小滝が連続してあらわれ、二股となる。右手の枝 沢は五mの滝を落している。水量は二対一。本流は五mの滝を越 すと小滝が続く。この辺より振り返ると、三本槍が美しい姿でな がめられる。沢は右へ、左へ曲がり、両岸はぐっとせまくなる。 七mの滝は、左手よりザレを見る。ザレの所をトラパースして落 口へ出るが、てがかりがなく、足はすべりいやな所である。右手 はのっペりしているが、水流近くにホールドを求めれは、登れな いこともない。倒木が散乱している所をすぎると、十五mの滝が 表われるが、左岸は階段状になっていて簡単に登れる。上流は、 明るくひらけ、ナメ床が美しい。所々沢は、残雪でおおわれてい る。地下足袋に雪が冷く感じられ、スノーブリッチが大きく口を あけている。最後の十五mは左岸を登り、中間あたりで草付へ逃 げるのが、なかなかシュッパイ所である。小滝、ナメをしはらく 行くと最後の二股になり、これから沢をはなれて尾板にとりつき、 わずかな踏跡をたどり、本流、衣紋の滝下へ出る。途中のヤブは 三時間あまりのアルバイトである。