苦節30年

         
                             斎藤 常栄

  私が山登りを始めたのが19歳の時だったから、かれこれ30年近くなります。

  そのうち、20年は岳友会でお世話になっているが、振り返れば山登りの苦しみ

だけで、頂上の感激、下りの楽しさを味わったことがない。

  笠ケ岳での冬山訓練のこと、掘り終わった雪洞で独りメランコリー(みなさんの

場合、私の真似をしても単なる物思いか憂鬱にしか映らないが)に浸っていると、

美しい女性が入ってきて「ローソクをたてて、こんな所に泊まってみたいわねぇ!

」その一言で私の心は天高く舞い上がり、そして地に落ちた。

  先日、テレビで再放送されたが、ソフィアローレンが主演している「ひまわり」

という映画をご覧になった方もあると思うが、その中でロシア女性が出て来る。私

は、こんな美しい人がいるのならと、パミール遠征の話しに「俺も行く」。メンバ

ー不足から降りるに降りられず出発。結果は動機が不純だったせいか、頂上を踏め

ずに下山、帰国。

  そういえば、うちのカミさんも山登りをしていた。結婚して20年、山登りの苦

しみの比ではない。この先、30年地獄の苦しみが待っている。

  体力も衰えてきたこの頃である。カミさんに買ってもらったカメラを片手に、の

んびりと山岳写真でも撮りながら山歩きをしてみたい。(また、写真技術が身につ

いたら本性を現し、ヌード写真に挑戦してみたい。)

  現役会員のみなさんには、ちょっと厳しい冬山にも連れてっていただき、冬山も

撮ってみたい。