山と山スキーの話
植木 孝 スキー好き + 山が好き ⇒ 山スキーが好き いつからだろう山スキーを目指すようになったのは。 俺は小・中共に運動会のかけっこで万年ビリのいわゆる運動音痴である。その 俺が叔父と従兄弟に連れられ鶏頂山スキー場に行ったのは小学校5年ぐらいだ ったと思う。今はびびる位に平らなところをやっとプルークボーゲンで汗まみ れ雪まみれになりながら降りてきた。 大学はスキーのできる信州か山形を考えたが入試の数学の有無で山形に決定。 しかし、半日で帰る客からリフト券をめぐんでもらう日々。本格的に始めたの は就職してからだ。スキーのうまい友人のおかげで少しは人並みに滑れるかと 思うようになっていた。しかし西村や本間の滑りには足元にも及ばない。深雪 、悪雪、コブではまったく歯が立たないのだ。俺もあのように滑りたいという 願望が強くなっていた。 いつからだろう山に登るようになったのは.。 初めの山登りは高校1年の恒例の磐梯山登山である。しかし本当のきっかけと は高校時代の生物部で登った白馬岳だろう。あの大雪渓と高山植物花の美しさ 山頂での達成感、充実感。雨の中を登ったはずなのになんでこんなに清々しい んだろう。そのときに山が体の芯に染み入ってしまった。大学は山形のせいも あり、また、日高単独縦走をやった写真部の大串先輩が「山に行け」と俺によ く言っていた事もあり、飯豊と朝日、それに月山には友人と出かけることが会 った。しかし、よく山に登るようになったのは、これまた就職してからである。 一博(以下いっぱく)と吉沢という高校時代からの友人と共に出かけるようにな った。そしてもっと山に登りたいと思うようになった。 いつからだろう、オフピステを求めるようになったのは.。 スキー場に行くとそのエリアはあくまで山の一部であり、もっとよさげな斜面 がより高いところに広がっている。眺めるだけでも美しくて心を動かすが、 「あそこを滑りたい、滑ってみたい、そのときはどんなに気持ちがいいのだろ うか。」と思うようになってしまった。 西村が言い出しっぺでカナダのへリスキーに行くことになり、山スキーの虜に なってしまった。あの自然の中で滑る快感と言ったらたとえようもない。 では、登りでの充実感と滑る快感を欲張りにも両立できるものは何か。そう、 山スキーである。山スキーこそが俺を満足させるものなのだ。鳥海山だったら 登りに5時間、滑りはせいぜい20分である。何も高い山じゃなくてよい。急 な斜面でなくてよい。新しく深い雪がなくてもよい。そりゃ、高く急で深いほ うがよいに決まっているが。しかし、登りの苦労が吹っ飛ぶほどの素晴らしい ものがそこにある。始めての山スキーは会津駒ケ岳。4月の雪は決してよいも のではなかったし、夏道なら2時間のところを3時間もかかった。しかし夏山 では味わえない空気や風があった。ましてや、この苦しい登りの後には素晴ら しい滑りが約束されているのである。う〜ん、ワクワクするぅ。頂上で早く滑 りたいと思う気持ちを押さえつつ、缶ビールを冷やして一休み。 さあて、いよいよ下りに取りかかる。ブナの林を縫うように気持ちよい滑りを 心の底から味わう。あっという間に登山口に着いてしまった。 帰りの車の窓から振り返ってみた山は今までのそれとは明らかに違っていたし、 他の雪山が「こっちも滑ってくれ〜。」と手招きしているように思えた。