安土山(1152m)
                           斎藤 常栄

  近々、山と渓谷社発刊により、「栃木県の山」に掲載されると思われるが、

その前に静かな山として安土山を紹介したい。

  安土山は、塩原町関谷宿の西方に位置し、中腹から下部は手入れの行き届い

た人工林、中腹から山頂にかけては、多様な樹種が生息している広葉樹林で、

林床には、早春にカタクリやニリンソウ、夏季にはレンゲショウマ、ギボウシ

が咲き乱れる。

  コースとしては、蟇沼集落から登り、関谷宿の鷹八幡宮へ下るのが変化に富

み楽しい。

  登山口である、蟇沼集落へは以前バスが運行していたが、廃止となり、マイ

カーか約5Kmの徒歩となる。マイカーで行った方は、集落を越えた所に駐車

スペースがある。

又登山口の2軒手前の菊池正男宅にお土産を持参して行けば、駐車OK!(妻

の実家)

  登山口は一番奥の民家前を左に折れ、鎮守様へと向う。5分程で右に鎮守様

左に貯水タンクがある。

  貯水タンクからスギ、ヒノキの薄暗い林へと道は通じており、やや行くと小

沢に出る。水場はこれより先にはなく、ここで水を補給し、朽ちかけた丸木橋

を渡ると、地元の人が弘法様と呼んでいる祠があり、道は2つに分かれる。沢

沿いの道はしっかりしており、そちらに行き易いが貯水タンクの取り入れ口で

あり、登山道は右側である。

  登山道は手入れの行き届いた人工林をつずら折りとなっており、結構きつい

登りであるが林内にはギボウシが咲いており気持ちを癒してくれる。
 
 広葉樹林の山もいいが、スギの人工林の山も又いい。(一度は京都北山地方

の山も歩いてみたい。梅原さん、案内お願いします。酒、舞奴付きで・・・)

  身体が汗ばんでくる頃には小尾根へと出、スギ大木2本に守られた祠があり

ここで一休止とする。

  ここからは、ヒノキの成林と造林地の間を縫う様に登り、林道に出ると、安

土山の山頂が大きく姿を現す。林道を10分程行き、左に折れるところで広葉

樹林となり、安土山へと通じる数本の道がある。どれを行っても100m程で

一緒になるが、この付近は春先にカタクリが一面に咲くとのこと。(私はカタ

クリの咲く時期に登ったことがない。)

  安土山の北西面を巻くように道は付いている。多種多様な広葉樹が生えてお

り、その地表には可憐な白い玉をつけたレンゲショウマが見える。(ベレー帽

をかぶり、パイプを加えて一人歩く私には似合いの場所である。)

  トラバースを終え、南面の尾根へと出る。ここまでは電力会社の巡視路とし

て整備されているが、登山道は180°方向を変え、小尾根へと取り付く。こ

こからは踏跡をたどり、笹と小柴をかき分け、道を探しながら進む。

  しばらく行くと樹林帯の中に真っ直ぐに延びた急登となる。登り切ったら、

下山路に赤布等の目印を付けたい。(道も定かでなく、下山時に他の小尾根に

下り易い。)

  やや平坦な尾根を高い方に見当をつけながら登って行くと身丈1.5m強の

笹生地となり、笹をかきわけて行くと山頂である。山頂はそれほど見晴らしは

良くないが、那須方面、塩原町太郎山方面は刈り払われている。

  下山路は来た道を忠実に下ることを薦めたい。下方に道路が見え、侮って下

るとヤブへ入り方向を見失う。

  林道からは関谷方面へ向う。長い下りの道のりだが、那須野ケ原を一望でき

ひだまりのなかなら、のんびりと下ることができ、途中、道沿いの窪地に入れ

ば一面のニリンソウ畑に出逢える。また、タラノメを見つけ晩酌のつまみとす

る。

  幾度かのヘアピンカーブを越え、発砲注意のカンバンのある個所で折れ、作

業道へ入る。作業道はススキで被われているが1km程で送電線の巡視路に出

る。巡視路との出合いを右折して細道を下ると、道は少しずつしっかりしてく

る。

  途中、鉄塔への二岐もあり、地図に記載されておらず戸惑うが、右方へ下る

とスギ林へと出る。スギ林の中は間伐材を出す道が幾本も作られ、巡視路もは

っきりしない。ここまで来ればカンで下るしかない。暗い沢を越えると砂利道

に出て「ホッ」とする。

  鬱蒼としたスギ林を「どこに出るのだろう」と心配しながら下ると、鷹八幡

宮の鳥居へと出、ここで私のコース案内は終わる。

  登山口に駐車してきたマイカーまでは5km程であるが、私は責任を追いか

ねる。

  又、標識は山頂に、黒羽山の会の「安土山」のみであり、登山口にも標識は

ない。地図、磁石は必需品。登り2時間。下り2時間。