尾上さんからの「カナダからの手紙」です。
                         写真はクリックすると拡大できます。
マリーン湖にて
2002/8/23
ホースシュー湖
2002/8/31
モレイン湖
2002/9/1
ロッキーの山々 その1
2002/8/23
ロッキーの山々 その2
2002/9/1
マウント・ロブソン
2002/8/24
ブラックベア(中央の木の間)
2002/9/1
アサバスカス氷河
2002/8/31
マリーン湖にて
02/8/23
ジャスパーから見た虹
02/8/24
登れそうにない滝 その1   ナイアガラの滝
2002/8/14
登れそうにない滝 その2
アサバスカ滝  2002/8/31
登れそうにない滝 その3 
サンワプタ滝
2002/8/31
登れそう・・・
ジョンストン渓谷
2002/9/1
泳ぎたい・・・
ジョンストン渓谷

2002/9/1
これは登れそう  ジョンストン渓谷
2002/9/1
登れそう
アイスフィールド・パークウェイ
2002/8/31
ラフティングとロッキーの虹 (2002年8月23日〜25日)

キングストンで知り合った友達、Mayukaと「週末暇だねぇ」「ロッキーに行こうか」という話になり、
2泊3日でジャスパーに行くことになった。エドモントンからバスで5時間。Mayukaは日本人だけど、
前の学校にいた頃から日本語で話したことがない。今回も、日本語は使わないようにしようということ
で意見が一致して、英語だけの旅になった。一日目はマリーン湖でクルージングとカヌー。天候に恵ま
れ、湖と山々の景色が素晴らしかった。Mayuka と「日本では絶対見られない景色だね」としきりに感
動する。

2日目はフレイサー川でホワイトウォーター・ラフティングに挑戦。カナディアンロッキーの最高峰で
あるマウント・ロブソンの近くまでバスで移動し、まずはウェットスーツと救命胴衣、ヘルメットを身
につける。一応記念だからとMayuka と写真を撮りあったのだけど、ちょっと後世には残したくない、
お笑い系の姿になってしまった。先週ジャスパーを通ったときに寒かったので長袖の服しかもってこな
かったのを後悔するくらい暑い一日で、ラフティングにはぴったりだった。夏も終わりになると水量が
少なくなってスリルは少なくなるとのことだったが、 それでもところどころに出現する急流をきゃあ
きゃあいいながらのりこえては仲間の顔が笑顔になっていく。流れの穏やかなところで、川の上から眺
める山や風景もとてもいい感じだった。ジャスパーの街に帰り、お土産を買っていると雨が降ってきた。
しばらく雨宿りをして通りに出たら、向こうの山に虹が架かっている!現実離れした美しさに感動のあ
まり、「So beautiful!」「So happy!」と英語力のなさを回数でカバーするかのように何度も口にせ
ずにはいられない。その度にMayukaはいつものようににこにこ笑いながら「Yes, Yes」と頷いてくれ
たのだった。


三度ロッキーへ (2002年8月30日〜9月2日)

ホストファミリーが見つかったとほっとしたとたん、彼らが留学生をロッキーに連れていくというので、
家に落ち着く暇もなく旅についていくことになる。今回はジャスパーからバンフへぬける、3泊4日。
3週連続でロッキーに行くことになるとは思わなかった。フレッド、クリスタル、私以外は全員中国語
を話す、総勢15人。

<カナディアンロッキーの滝>

 前回、前々回とも山を歩けなかったのが残念だったので、今回はハイキングもするよ、と聞いて楽し
みにしていたのだけど、実際は湖の周りを少し散策する程度だった。数ある湖や滝をできる限り見せよ
う、という企画が原因らしい。最初に見た滝はアサバスカ滝とサンワプタ滝で、どちらも水量が多く、
滝というより「これが水の迫力です」という感じだった。とても登れそうにない(どうしても思考回路
は沢登りモードに)けど日本の仲間に見せたいなぁと写真を撮る。

<コロンビア大氷原>

 今回のハイライトはコロンビア大氷原でのスノーコーチツアー。レストハウスから氷河のそばまでバ
スで移動し、スノーコーチに乗り換える。最初に氷河に降りる道が急傾斜でほんとにこここの車で走る
の、と恐怖感を覚える。なんでも世界で舗装されていない道路でお客さんを乗せた車が走る道では最も
傾斜がきついそうだ。すごいんだかすごくないんだかよくわからない。目的地につき、生まれて初めて
氷河の上に立つ。歩いてきたわけではないのでなんだかズルした気分だけど、やっぱりうれしい。氷河
から解け出す水をのむと、ガイドさんがそれは400年前、産業革命より前に凍った氷が溶けた水だか
らすごく純粋なんですよ、と教えてくれた。

<モレイン湖とブラックベア>

モレイン湖で昼食を食べていたら、リスがやってきた。クリスタルはチップモンクだと教えてくれた。
どうもチップモンクとsquirrel の違いがよくわからない。餌をあげることは禁止されているはずだが
人間の食べ物の味を覚えているらしく、しきりに周りをちょろちょろする。ついに足下でパンくずを見
つけて食べ始めた。すごくかわいいのだけど、ますます人間に依存してしまうと思うと少し複雑。とは
いえシャッターチャンスは逃さずに写真はしっかり撮った。ご飯を食べ終わって、冷たい風が吹きすさ
ぶ中、少し高台になっている展望台に登る。天気は良くないけどとても美しい湖だった。

次の目的地であるルイーズ湖に向かう途中、モレイン湖から少し走ったところで車が何台か止まってい
る。動物かなと思ったら、誰かがクマだクマだという。見ると、道沿いの崖でクマが木の実を食べてい
る!思ったより少し小柄で黒い。ブラックベアだ。私の座った方がクマに近く、シャッターチャンスだ
と写真を撮るが、ブッシュに隠れてうまく撮れなかった。こんなに間近でクマを見られるとは思わなか
ったのですごくうれしい。

宿泊地に向かう途中、今度はエルクがいた。エルクも餌を食べている途中でブッシュに隠れてあまりう
まく撮れなかったが、とにかく写真を撮る。前回も前々回もエルクもクマも見られなかったのに今回は
両方を見られてラッキーだ。

<ジョンストン渓谷>

今回のツアーで一番長く歩く場所だ。沢沿いのおおかた舗装された散策路を歩くだけだけど、日本の沢
を思い出しながら歩けるので楽しかった。カナダに来て初めて登れそうな滝を見てうれしくなり、写真
を撮る。ここなら沢装備で歩けそうだなぁとうきうきしながら、クリスタルに「日本には沢登りってい
う山登りの方法があってね・・」と説明を始めたが、「ここの水は冷たいから川の中なんて絶対歩けな
いわよ」とあっさりくぎを差されてしまった。確かに寒そうだ。毛塚さんなら「こんなの全然冷たくな
んかねぇ」とか言いながら平気で登りそうだけど、と妙なところで監督を思いだしてしまった。ハイラ
イトの二つの滝は相変わらず沢登り向きではなかったが、幸せな気分で散策を終えた。


ゼイオー

 ホストファミリーはフレッド、クリスタルと3人の子どもという大家族だ。それにもう一人重要なメ
ンバーが、犬のゼイオー。ラブラドールレトリバーとハスキーとその他色々の雑種だという、ブロンド
美犬。一歳になったばかりの、好奇心旺盛で元気な若犬だ。彼女が普通の犬と違うのは、何かを追いか
けるのが好きなのではなく追いかけられるのが好きなところ。彼女のために木の枝やボールを投げても、
誰かのところに持って戻ることはない。もったまま逃げていってしまう。人が追いかけないと、ほらほ
ら追いかけておいで、といわんばかりに近くまでやってきてはまた逃げる。彼女は人間が自分と遊んで
くれるのではなく、自分が人間と遊んであげていると思っているに違いない。英語に疲れたとき、言葉
がなくても一緒に遊んでくれるゼイオーは本当によい友達だ。


キウィーとケイシー

 家にはゼイオーの他に、二羽のボタンインコがいる。インコは英語でLovebirdという。その名の通り、
二羽が寄り添っている姿はとてもかわいい。しかし、人も鳥も見かけによらないのは同じらしく、油断
しているとすぐに鋭い嘴で指をかまれてしまい、すごく痛い目にあう。

ケイシーは紙を見ると一目散に文字通り飛んできて、くちばしで端から器用に細長くちぎっていく。彼
はこの作業が大好きで、かごから出して少し目を離すと家中の紙がシュレッダーにかかったようになっ
てしまう。美しい風景写真だったカレンダーも今は無惨な姿になってしまった。初めはただ噛みちぎる
作業が好きなのかと思っていたのだけど、先日別の目的が判明した。噛みちぎった長細い紙を、彼は尾
羽に埋めて自分を飾っているのだ(すぐとれてしまうからみんな気づかなかったらしい)。こういうと
ころも妙に人間くさくてかわいい。というよりも、私たちに彼らと同じ名残が残っているというべきか
な?ちなみにキウィーも男の子だけど、彼は紙には全く興味がない。代わりにすごく清潔好きで水浴び
が大好き。いつも二羽一緒にいて、初めて見る人には見分けがつかないほどそっくりな緑の美しい鳥た
ちにも、ちゃんとそれぞれ個性はあるのだ。


初めてのスカイダイビング (2002年9月28日)

 アルバータ大学のアウトドアクラブから、スカイダイビングツアーのお知らせメールが来た。水曜日
にメールを受け取ったのだが、金曜にトレーニング、土曜日が本番。参加希望者は今日中に返信するこ
ととある。大学向けの特別料金も魅力的だし思いがけないチャンスだと、あまり考えずに申し込んだ後
で怖くなり、後悔し始めた。バンジージャンプも跳ぶときになって泣きそうになったっけ…と思い出さ
なければいいことまで思い出す。ともかくもう申し込んだんだからと、金曜の講習に参加。学内の教室
でビデオを使った講義を受け、降下時の体勢等の練習をする。私以外の参加者は全員アルバータ大の学
生で、当然ネイティブのスピードでの説明なので、何度もついていけなくなる。これで命がけのダイビ
ングに挑んでいいものかと不安なまま3時間以上に及ぶ講習が終わり、最後に必須知識の確認クイズが
あった。問題の英文を読むのに時間がかかってしまったけど、ほとんどの問題は答えがわかったのでひ
とまず安心する。

土曜日、いざ本番。朝食をとりながらクリスタルに「講習で時々よくわからないところがあった」とい
うと、「タンデム(インストラクターと一緒に跳ぶ)なの?」と聞く。「ノー、今回はみんな一人ずつ
跳ぶみたい」「…」。相当心配そうな顔で「どうすればいいか、本当にわかってるわね?」と念を押さ
れてしまった。心配されて当然だなぁと反省しつつ、大丈夫だよと笑顔を張り付けて出発。

 大学から1時間弱のドライブでダイビングセンターに着く。メンバーはカナダ人学生だけでなく、ベ
ルギーやスコットランドからの交換留学生、両親がケニア人と日本人だというカナダ人なんかもいて、
話を聞くのも楽しい。飛行機の実物大模型を使ってもう一度降下時のおさらいをした後、3人ずつのグ
ループに分かれ、ギアを身につけていよいよ飛行機に乗り込む。パイロット、インストラクターを合わ
せて5人でいっぱいの小さい飛行機だ。グループ内の体重の重い順に飛ぶので、私は最後。一人、二人
と無事降下した。私の番だ。機外に出て、いったん翼にぶら下がり、インストラクターの合図で手を離
す。降下のカウントを始めたと思ったらもうパラシュートが開いていた。パラシュートに異常がないか
確認した後、まずは眼下の風景を眺め、着陸地点を確認。降りている感じは薄く、空中に浮かんでいる
と言った方が近い感覚。気持ちいい。少し落ち着いて、右や左にターンしてみる。面白くて、意味もな
くぐるっと一回転したりして遊んでいたのだが、気がつくと着陸地点より風下に流されている。胸元の
トランシーバから「ジャンパー・ナンバースリー、真下の林を避けましょう、右に!」と指示が来た。
着陸地点からはますます遠ざかる。「もう少し右!」「障害物がないか確認して」「じゃあ着陸態勢、
膝を閉じてね」。無事着地。ふぅ。パラシュートを回収し、センターに向かって歩く。ようやくたどり
着いたら、みんなに「林に引っかかったんじゃないかって心配してたんだよ」と声をかけられ、スタッ
フには「体重が軽いからしょうがないね」となぐさめられた。着陸地点からこんなに離れてしまったの
は私だけだったらしい。でも、とにかく、面白かった!

 申し込み時に一度やると病みつきになると言われていたのだけど、まさにその通りで15人のメンバ
ー全員がもう一度飛びたい、と言いだし、来月にまたツアーが組まれることになった。めでたしめでた
し。


不意打ちだったオーロラ (2002年10月1日)

 夜、自室で宿題をしていたら、クリスタルが、「Toko、まだ服着替えてない?急いで出ておいで!」
と呼ぶ。シャワーを浴びてパジャマに着替えた後だったので、「どうして?」と聞くと、「Northern 
lights!」と返事が返ってきた。オーロラだ!「とりあえず上から何か着て出てくればいいわ」と言わ
れ、思い切りあわててジーンズに履き替え、上着を着て外に飛び出した。

 「ほら、あれだよ」と教えられて最初に見上げたときは、よくわからずに薄い雲が懸かっているのか
なという感じだった。家の前は大きい通りなので街灯が明るすぎるのだ。それでもしばらく見ていると
緑色の光が動いているのがわかる。クリスタルが、車で近くの明かりのない公園に行こう、といってく
れ、フレッドと3人で急いで車に乗り込んだ。町外れの少し暗くなったところで車から降りて空を眺め
ると、今度はもっとはっきり見える。緑色の光のカーテン、という感じ。とても美しい。今まで写真で
しか見たことがなかったけど、実際に見るとこんなに速く動くものかと驚く。今ここが明るかったと思
うともうぼやけ始め、今度は向こうが明るくなっている。3人であっちがきれい、こんどはこっち、と
言いながらしばらく眺めていたが、あわてて出てきたせいでみんな薄着だったので、家に帰ることにな
る。カメラを持たずに見ていたのだけど、どちらにしろ私のカメラではこれは写しきれないなぁと残念
に思う。カナダに来てから、日本でもっとカメラを勉強しておけばよかったと思うことがしょっちゅう
ある。(浅川さん是非カナダに来て写真を撮って下さい!)

帰り道「一年に何度くらい見られるの?」と聞くと、一度も見ない年もあるよ、天候にもよるし毎晩空
を見上げるわけじゃないからね、とクリスタルが言う。フレッドに8月の終わりから12月頃が一番よ
く見えるよ、ともいわれ、いい時期にエドモントンに来たなぁと思う。実際、エドモントンからもオー
ロラが見えるとは聞いていたが、自分の滞在中に本当に見られるとは思わなかったので、うれしい不意
打ちだった。フレッドはさらに、「ここは騒がしいからだめだけど、田舎の方でNorthern lightsを見
ると、チリチリって言う音が聞こえるんだよ」と教えてくれた。オーロラの音ってどんな感じなんだろ
う?是非一度聞いてみたいと思う。


エドモントンの秋 (2002年10月9日)

 カナダといえばメープル=楓というイメージを持つ人がほとんどだと思うのだけど、実際は国中に楓
の木があるわけではなく、オンタリオ州以東に分布する。特にケベック州がメープルシロップの産地と
して有名だ。ロッキーに近いエドモントンでは楓の木は見かけない。ここでは秋の色は様々な黄色が中
心になっている。

 エドモントンには季節が二つしかない、というジョークがある。7月(夏)と長い長い冬だけで、秋
も春もないという。確かに霜がおり、木々が色づき始めたとおもったら、もう雪が積もりだした。最低
気温は連日0度を下回り、吹く風はとても冷たい。でも、目で感じる限りは今が秋真っ盛り。秋が短い
せいか、木々が次々に降らせる木の葉がちょうど日本の桜吹雪のように、そこここで舞っている。大地
を黄色に染めた短い秋が、もうすぐ終わろうとしているようだ。


カササギ

 エドモントンに来てから、街を歩いているとよく見かける鳥がいる。カラスより少し小さくて、背中
から尾にかけて黒く、お腹が白い。光が当たると暗緑色に光る長い尾羽が特徴的で、特に空を飛んでい
る姿が印象的だ。家に帰って北米鳥図鑑を見ていたら、クリスタルが何を調べているのと聞く(フレッ
ドとクリスタルは自然が好きで特にクリスタルは鳥が大好きだ)ので、こういうきれいな鳥がいて、と
説明すると、すかさずそれはmagpieよと教えてくれた。きれいだけど、ゴミなんかをあさるので嫌われ
者だとも。どうやら日本でいえばカラスのような鳥らしい。

自室に戻り、英和辞書を引くと、magpieはカササギだと書かれていてびっくり。カササギといえば万葉
集に出てくるので日本的なイメージがあったのだけど、よく耳にする割には実際見たことはなかったし、
まさかカナダで出会えるとは思わなかった。懐かしいような不思議な気分。広辞苑で調べるとスズメ目
カラス科に属するとあり、カラスに似ていることを納得する。さらに日本ではカササギが天然記念物で
あることを知り、ますます驚いた。いつか、北九州に生息しているという日本のカササギにも会ってみ
たい。


冬の始まり(2002年10月11日)

 朝食をとっていると、フレッドが今日は最高気温が零度らしいよと教えてくれた。先日ロージーがく
れたウィンタージャケットを早速着込み、学校へ向かう。家を出たとたん冷気で息が詰まりそうになっ
たけど、ジャケットのおかげで思ったより寒くない。日本でも氷点下の気温は珍しくないし何度も経験
しているのだが、問題は今がまだ10月の中旬だということだ。今からフル装備で外出しているようで
は…。この先4ヶ月、ますます寒くなるはずなのに。噂に聞くカナダの冬がいよいよやってくる。どん
なのか確かめたいというわくわくした気持ちと、果たして耐えられるかしらという不安が半分ずつ。

 授業中にふと窓の外を見ると、雪が降り出している。みんなで雪だね、寒いはずだねぇと話している
と、みるみるうちに景色は真っ白になってしまった。黄色に色づいた木々に雪が積もっているのがとて
もきれいだったので、午後、クリスタルがゼイオーを散歩に連れていくのについていくことにした。ゼ
イオーは雪などものともせずにいつもと変わらず林の中を走り回っている。しかも、川辺に着くなりい
つものように川に飛び込み、ずぶぬれではしゃぎながら戻ってきた。さすがカナダ産。若犬、恐るべし。