オカリナ                        池上 卓男

 かつてはテントの中では必ずといっていいほど山の歌を歌った。一人の時は
口笛を吹いていた。
 会員の世代が代わり、カラオケが普及した現在では、なぜか山の歌を歌うの
は場違いな気がして仕方がない。先輩が歌わなくなったので、山の歌を知らな
い会員が増えている。余計に唄い辛い。
歌を忘れた山男は本当の山男なんかじゃない!

 私の本棚には「山の歌」の本が三冊ある。そしてオカリナが本の隙間に置い
てある。
初めてオカリナを手にしたのは大学に入ってからだった。それまでハーモニカ
やギター、フルートといろいろ手を出したがどれも物にならず諦めていた時だ
った。単調で哀愁を帯びた音色が気に入って早速手に入れたが、手作りの為か
音程が微妙にずれているのが気になって仕方がなかった。低い音を好んでいた
ので大きめの物を使っていたが、山に持っていくのには具合が悪かった。

 数年前に、茨城県の笠間でオカリナを作っているところがあることを知り、
早速買いに行った。実際に吹いてみて気に入ったのを選ぶことができた。
手のひらに収まるので邪魔にもならず、軽いのもいい。

 いつかまた昔の仲間と山に行き、テントの中で山の歌を唄うことを楽しみに
オカリナの練習をしている。

いつかある日 山で死んだら 古い山の友よ ・・・

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下記のホームページで山の歌のメロディが聞けます。
http://www.hi-ho.ne.jp/momose/mount_midi.htm