仙人通信K(御正体山1682m) 明日は曇り一時雨とのこと、なんと一日しか晴れ間が無い、富士山が見れたらラッキーである。 道志路の白井平から登る事にした。御正体山屋と看板が掛かったお店の前を右に曲がり、車を進めた。 一昨日降った雪で林道にも積雪があり、林道の入り口の僅かの広場に車を止めての登山となった。 歩き始めると、雪が林道を覆うが、柔らかい。沢沿いの足るところで雪解けが始まっていた。 溶けた雪は鮮やかな緑のスギゴケやニシキゴケをつたわり、滴れ落ちている。 「岩間とじし 氷もけさは とけそめて 苔の下水 道もとむ也」西行法師の歌そのものだ。 西行法師が「苔」の字を使っているが、植物学では「苔」の字は「ゼニゴケ類」に使われ、スギゴケは 「蘚」の字が宛てられている。歌はどちらの「コケ」だったんだろう、なんて考えた。 きらきらと光落ちる水滴になにやら、春の兆しを肌で感じ嬉しい。30分も歩いた時点から、沢とも離 れ尾根道となり、杉の木立から、ブナやモミ・ヒメシャラの日当たりのよい登山道となった。 積雪も30〜50cm程あり、時折足が膝まで潜る。昨日の夕方、下山したと思われる登山靴の靴跡 がクッキリと一つあるだけで、今日の登山は自分一人だけのようである。歩き初めて80分程で、道坂 トンネルからの登山道と合流点に到着した。山頂に向かい登山者の真新しい足跡が一つあった。 そこからの尾根道はかなりの険しさとなり、靴で足場を固め確かめながらのゆっくりした登りである。 大室山・鳩の胸山・菰釣山が・北側には都留の町が望められるものの、音は時折通過する飛行機程度で 長閑である。「万歳俺だけの空間だ」。尾根の木はシオジツツジ・ハリモミ・ブナである。ブナの幹には 地元の中学生が架けた小鳥の巣箱が沢山ある。心温まる思いだ。巣箱には昨年巣作りに小鳥が集めたス ギゴケ類がはみ出して微笑ましい。山での小鳥の多くは、スギゴケ類で巣を作るのが多いと云う。 山頂では、都留市から来た20代の若者が休憩を取っていた。山はいいもんだ、見ず知らずの人でも四 方山話が弾ずむ。山頂の積雪は80cm位となり、小さな祠の赤い屋根がチョコンと顔を出していた。 三角点の標識を探してみたが確認することはできなかった。山頂からの見晴らしは決して良くないが、 富士山の裾野のベージュ色が梢の間から僅かに望める。展望の良いところを探し廻った。「見えるでは ないか、富士山の河口湖側の斜面に濃鳥の雪形が」、掛かる雲も殆ど無くすっきりとした富士山だ。 一人占めしたこの景観に大満足をした。下山はアイゼンをしっかり着けて、一歩一歩慎重に雪を踏んだ。 登り下りで4時間半の行程であった。 (写真の真中に濃鳥が羽ばたく h17.3.16)