仙人通信N(入笠山1955m) 雪解けの登山道を25分、山頂に立つと5月と言うのに少し肌寒く感じる風が頬を過ぎる。 誰もいない山頂で、妻が結んでくれたオニギリを頬張り四方を見渡す。7ヶ月ぶりに訪れた入笠山だ。 春霞みの向こうに富士山・鳳凰三山・鋸岳と甲斐駒ケ岳・千丈岳・北岳と繋がる南アルプス、雪が輝く 剣岳・木曽駒ヶ岳・木曽の御岳等の中央アルプス、乗鞍岳。北アルプスは雲の中である。 霧が峰から蓼科山・北横岳等の北八ヶ岳、硫黄岳・天狗岳・編笠等の八ケ岳そして阿弥陀岳の爆裂火口 から火砕流を流した立場川、茅ヶ岳や金峰山等の秩父連山と360度の展望である。 あの山に誰と登って、こんな事・あんな事があったな〜、なんて誰にも邪魔されず、昔に戻れるひと時 を得た。入笠山は6月スズランで大変な人で賑わうが、5月半ばでは訪れる人は物好き程度だ。 今回は入笠湿原にミズバショウを探しに訪れてみたのだ。今月2日に青木湖の先の親海(およみ)湿原 と姫川源流に出かけたが、ミズバショウは扶養土のせいかA4サイズの紙を菱形にしたような花で、尾 瀬や鬼無里で咲く花のイメージが壊れたからだ。 ここ入笠湿原では開花のタイミングに合い、可愛いミズバショウに合えた。ザゼンソウも数は少ない が観うけられる。湿原はまだ眠りから覚めたばっかりである。コバイケイソウも丸まった新芽が伸び始 めたばかりだ。それでも木道を2周して探したら、僅かであるが5弁の白い花を5cm程の茎に付けて咲 いてるヒメイチゲが目に入った。180mmのマクロに2倍のエックステンダーを着けてシャッターを切 った。他はハシリドコロとスミレを見かける程度である。マイズルソウもやっと芽を出したばかりでス ズランは芽すら出ていない。入笠山を挟んで反対側に位置する大河原湿原には、ニリンソウが咲くので あるが、今頃はやっと葉がでたばかりである。花はなくともコケ類が豊富だ、観察しよう。水蘚とスギ 蘚の観察には最高の湿原である。(スギ蘚類はこの時期に3cm程の穂先にゴルフのクラブのような胞子 を付ける) 木道に入るとヒメイチゲが足元で咲いている。よく眺め廻すといたるところで咲いている、 群生地ではないか。入笠湿原とは大違いである。カメラも近づけて撮影もできる。すれ違った5人のお ば様パーテーは何も無い湿原ね!てな調子で、ただ歩いて行ってしまうのを見かねて「ヒメイチゲが咲 き誇ってますよ」と教えたが、それまで気付かず居たようだ。(余計ごとだがね“”“) 木道の横には黄色い、これも5cm足らずの茎に1cm程の黄色い花をつけたダイコンソウ(バラ科)が 待っていてくれた。近づいてシャッターを切った。 今日の仙人は、雄大な山々と手の中に入る愛らしい花に出会え、幸福感で一杯であった。
(ヒメイチゲとダイコンソウ h17.5.9 )