仙人通信R(縞枯山2403m)

 入梅になったのに梅雨前線の北上が遅れ、長野の天気予報の気温は28度以上になると言う。
麦草峠に車を止めて、茶臼山(2384m)→縞枯山→雨池を廻る約4時間半のコースを計画した。
麦草峠から登山道はシラビソやオオシラビソの林に入る。火山であった事もあり、直径50cmもある
岩石がごろごろして歩き難い。山の斜面はスギゴケやヤツガタケトウヒで覆われ静寂さを保っている。
そんな中に、白いコミヤマカタビラやミツバオウレンが咲いている。オサバクサは鶯色の蕾状態であ
り、開花には早すぎたようだ。今回は、このオサバクサ(漢字で筬葉草と書く。筬とは紡績で用いる
クジラヒゲだそうで、糸で筬を吊るした観じからの命名らしい)の写真を撮るための登山だ。麦草峠
から、30分程で中小場(2232m)に辿り着いた。小さな山頂の岩陰には数株、ピンクのイワカガ
ミが咲く、コバイケイソウも新芽を着けて綺麗だ。シラビソの縞枯の中、急な登りが30分続き茶臼
山山頂に立った。残念ながら霧が掛かり視界は良くなかった。標高差100m程を下がると鞍部となった。
ヒョットするとが的中し、羊歯のような葉の中央にオサバクサが綺麗に咲いているではないか。
レンズや三脚を準備したりしていると、先程駐車場で身支度をしていた、小生と同年代の夫婦に追い
つかれ、「白いこの花は、何て言うんですか」と覗き込まれた。「オサバグサって言って、北八の代
表的な花ですよ」と教えたら「メモを執ろう・・忘れないように」と手帳に書かれていた。コマメな
人だ。
コミヤマカタビラもここでは、一面に咲いている。縞枯山のバーコードのような縞枯れが良く望める。
亜高山帯の西南面のシラビソ等が実生からほぼ100年で順次山頂に向かい縞状に枯れ、枯れた下には
次の実生が生える現象を繰り返すのだそうで、山の名前もそれに因んでいると本にはある。
ここではオサバクサがシラビソの枝に覆われた下に多いようだ。約1時間で縞枯山の山頂に立てた。
周辺はミツバオウレンが見事である。ここから雨池峠まで30分間、シラビソの中の急な下りである。
やがて視界が開けて、落葉樹の林に変わった。山桜やガマズミの花が見える。ピンクのイワカガミが
誰に邪魔される事無く、咲き誇っている。カメラを取り出し何枚かシャッターを切った。程なく雨池
峠である。ここからは熊笹の道を雨池に向かう。道は30分程度で林道に出た。雨池はすぐそこだ。
熊笹に隠れる様にして、濃い青色で3cmもの大輪のミヤマスミレが群生していた。スミレも好い物
だ。雨池は山間の擂鉢状の池で水の流出場所がない。デカパミがあることから、八ケ岳最終期の大噴
火の際の噴火口であったらしい。周囲にはシャクナゲがあるも蕾はまだ固い。カッコーが鳴き、霧が
出てよい風情だ。雨池からは、林道を離れて茶水池まで熊笹の登山道を1時間程辿った。木々の下は
コミヤマカタバミが白く目立つ。熊の出没が気になる道ではあるが、シジュウカラや鶯が鳴いて元気
をくれた。
 (オサバクサ)          (イワカガミ)          (コミヤマカタビラ)


(h17.6.14)