仙人通信23 金峰山(2598m) 月曜日の朝9時前と言うのに大弛峠の駐車場は20台近い車だ、百名山に選ばれるだけの事はある。 大弛峠の駐車場は海抜が約2300mあり、金峰までは、高低差300m程の緩やかなシラビソ林の登りから 始まる。北奥千丈から朝日岳の一帯のシラビソ林は、縞枯山同様に縞枯れ現象が観られる。しかし縞枯 山の様に太い幹が中心でなく、幹径が5cm程度でも枯れているのが目立つ。 シラビソ林はスギゴケ類に覆われ、昨夜の雨をたっぷり含んだ蘚類は、生き生きして綺麗だ。 太いタケカンバやシラビソに覆われた小さな広場、その中央にケルンが詰まれた朝日峠に30分で着く。 ここからの登りは急勾配となり、体が汗ばむものの、木に覆われた尾根道は、風が抜けて爽やかだ。 花の終ったゴゼンタチバナの小さな葉が至る所にあり、7月頃であれば見ごたえを感じる。朝日峠から 40分程で石楠花の小道に変わり、朝日岳(2579m)の山頂に出た。行く手には金峰山頂の五丈岩が望め、 富士山・南アルプス方向は雲に覆われているものの、他は真っ青の晴天である。1時間半位で山頂に立 てそうだ。足元にはアキノキリンソウ・薊に似たヒゴタイ・赤い実のコケモモが点在する。道は鉄山を 巻き、シラビソやトウヒの林で、なだらかだ。白い小さな花を見つけて、カメラを構えていると「何の 花ですか」と声を掛けられた。「シオガマに似ているですが、よく判らないんです」なんて会話をして いると、周囲に人が集まり撮影場となってしまった。(調べましたらセリバシオガマであることが、判 りました)1時間程でシラビソの林からハイマツと石楠花の登山道となり、ツガザクラが地面を覆う亜 高山帯に変わった。賽の河原では、コケモモとタカネナナカマドの実が赤く熟れ、日の光に輝いている。 金峰山・山頂は、白い花崗岩に覆われ、周囲を眺める広さもないので五丈岩まで進んでみた。五丈岩を 目前で見るとその大きさに圧倒される。ハイマツ・ナナカマド・コケモモ・ツガザクラ・トウヤクリン ドウ・ヒゴタイ・それに白いコゴメクサの花が辺りを埋め尽くしている。茅が岳・八ケ岳・浅間山が、 そして眼下には瑞牆山が白い奇岩を見せてくれている。富士山が望めたら最高の100名山なのに残念だ。 賽の河原まで戻り食事をした。眼下には信濃川上から三国山に掛けて、ビニールハウスで白くなった盆 地が見える。五日市―川上構造線が眼下に望め地理の勉強を実地でしているようだ。ところで「関東山 地」との表現をご存知でしょうか?。愛川―藤の木構造線・武蔵丘陵・中央構造線・岩村田―若御子等 の断層で囲まれた範囲で、その背骨が雲取山からこの金峰山まえ続く2500m級の山である。その中心が 秩父帯と言う岩石から構成されているが、金峰山・国師から大菩薩峠に掛けては花崗岩により構成され ている。山頂の風化した石を良く見ると、雲母の含有量が意外と少ない花崗岩である事を確認し、納得 した。車で下山中に沢で顔の汗を流して、ふと見ると紫のトリカブトが一輪咲いて居てくれた。 6時間余りの勉強した登山でした。 (h17・8・29)