仙人通信27(御荷鉾山1286m)

 御荷鉾山は鬼石と藤岡の間に座し、関東平野に突き出した東西双峰の山である。
名前がかなり厳しいが、ヤマトタケルの尊が蝦夷・常陸の東征の帰りに信濃へ趣く折、この地にて
「ホコヲニナハス・・・」から山の名となったとある。叉元禄時代には山岳信仰が盛況となり、大きな
鉾を持つ、不動明王が祭られたともある。さほど高くはないが、展望が良いことで知られた山である。

 万世橋からスーパー林道を進み、町営みかぼ高原荘を過ぎると、西御荷鉾山登山口の駐車場である。
駐車場からは、桧林の中を15分ほど進むと、頭上が開け、ここから15分ほど丸太の階段を登ると西御荷
鉾山の山頂である。山頂まで100mほどの所で、薄紫のリンドウが出迎えてくれた。立冬も過ぎ、花等
は期待していなかっただけに嬉しくなった。切り開かれた山頂の展望は寒気も入り快晴で、抜群であっ
た。山の西側は赤久縄山が遮るも、北側の眺望がよく、荒船・浅間・妙義・榛名・子持ち山・どっしり
と構えた武尊・赤城・皇海・袈姿丸や遠く谷川までが手にとるようだ。東側の関東平野は東御荷鉾山や
桧にて遮られるものの、南側は武甲・両神・そして飛行機事故で有名になった御巣鷹山である。山頂に
は、前述の人丈もある石に彫られた不動明王が青空に映える、そんな落ち着いた佇まいである。
下りの登山道は桧の林に入るが、北側は楢等の落葉樹で、伊勢崎や高崎の町が見える。紅葉も色好き興
を添える。山頂から30分でスーパー林道の投げ石峠である。この林道を50mほど進むと、東御荷鉾山の
登り口である。九十九折の登りであるが粘板岩のように圧縮された御荷鉾緑色岩類が観られる。
この緑色岩は塩基性片岩と言い、玄武岩の凝灰岩であり、この山全体を形成している岩だ。
ご存知のように日本の中央構造線の南側には、この地の地名で有名な三波川帯があり、その外縁部に付
いているのがこの岩類で四国や紀伊半島まで分布している。このため地質学では鍵層としている。
(因みに庭石として、A層に属する紅レン石等が三波石としてよく知られている)
10分ほどで山の南側を巻く緩やかな登へと変わる。杉・桧の植林された登山道は、木漏れ日も多く、気
持ちがよい。春には山ツツジやミツバツツジが沢山咲き、さぞかし綺麗であろうと想像される。叉、こ
の木漏れ日の道には、リンドウが健気にもあちこちに咲いている。峠から50分ほどで東の山頂に着く。
この峰にも元禄十年建立の不動明王が祭られている。山頂からの見晴らしは南側が主体で、西峰より劣
るが、西峰で見た山に加え、三国峠・金峰・雲取・川乗等も加わり絶景と言うしかない。来た道を峠ま
で戻った後、途中に尾崎喜八の文学碑のあるスーパー林道を30分掛けて駐車場に戻った。
今日は、紅葉に加え、この地で有名な冬桜が見頃で、帰り道も楽しませてくれた。(h17.11.9)