仙人通信30(竜爪山1051m) 竜爪山は駿府城の鬼門の備えとして、叉江戸時代の山岳信仰と相まって知名度が高い山である。 国立公文書館の「駿河竜爪山の由来」には時雨窓山(じうそうざん)や多くの天竜が飛び交い、爪を落 とした事等に由来すると、奥田住職のホームページにある。一方、清水市教育委員会はヤマトタケルが 東征の折り、この山にて時雨れに襲われ衣を濡らしたことから、時雨[めぐる]山→じうそうざん→リ ュウソウ山→竜爪山となったともある。薬師岳(1051m)と文殊岳(1041m)の2峰からなる 山で、日本平PAからも良く見える形の良い山である。 草薙駅で藤枝バイパスを降り、瀬名ICから平山温泉の先にある登山道入り口の駐車場に車を止めた。 登山道は新旧からなるが、沢沿いの旧道を選んでみた。さすが山岳信仰の山だけの事があり、竜爪山権 現を祀る穂積神社までは35丁目までの道程杭が丁目毎にあり、自然石の階段も整備されている。 沢の西側には安山岩の層理が山頂に向かい10度程の傾きで6丁目位まで観察できる。 この山は、国界橋→韮崎→早川→興津川から成る糸魚川・静岡構造線と阿部峠から阿部川の東岸を通る 十枚山断層の中間に位置し、十枚山・真富士山・竜爪山・賤機山を通り焼津の高草山へと繋がる竜爪層 群と呼ばれ、ホッサマグナの南西縁であると言う。岩石は安山岩とひん岩を主体とする山だ。 約1時間程で白い石の鳥居の立つ穂積神社に着く。この間は、杉・桧の林が主体で視界は良くない。 穂積神社は銅板葺きの白いコンクリートの社である。神社の裏手から杉の巨木の中を10分ぐらい歩く と、鉄の階段だ。10段位毎に九十九折となり400段近い急な登りが続く。20階程の高層ビルの非常 階段を上る感じだ。さらにコンクリート丸太の階段が続き、神社から40分程で俵峰との分岐点に立つ。 振り返ると雲一つ無い富士山が愛鷹山を抱えるように聳えている。文句のつけようもないのだが、時折 突風が轟音と共に興津川から吹き上げ、体を屈めるようだ。杉木立の中の薬師岳山頂に10分程で着く。 当然、視界は良くない。石の社に置いてある寒暖計は、-3°Cを示しているが風が強い分だけ寒さが 身に凍みる。木立の中を20分程歩くと文殊岳の山頂に着く。こちらは草地もあり見晴らしもそこそこ だ。一等三角点の山だけの事はある。富士山の左手には白く雪化粧した大菩薩峠・右手には愛鷹山・浜 石岳・真下にはコバルトブルーの清水港と三保の砂嘴や松原・阿部川の緩やかな流れで抱えられた静岡 市内・太陽を反射して雲母(キララ)状の駿河湾・御前崎までも見える。しかし、肝心な南アルプスは 林に遮られている(残念)。山頂で昼食を取り、ノンビリと眼下を眺めてから腰を上げた。 約4時間の山登りであった。平山地区には谷底に500円で入れる素朴な温泉があり、硫黄の香りを嗅ぎ ながら湯に浸かり、地元の年寄と富士山談義を楽しむ事が出来だ。 茶の葉が輝く里道を帰路に着いた。満たされた一日でした。(h17.12.25)