仙人通信31(神山1438m) 昨年の暮れから寒波が続き、小田原城の雪景色や箱根の通行規制がテレビ等で報じられた。 11日の天気予報は、1日中晴天に恵まれると言う。今年も正月は箱根に登り、白い富士山を見たい。 強羅から大涌谷ヘ登る県道を使い、ロープウエーイの早雲山駅から箱根内輪山を歩く事にした。 駐車場には最近降った10cm程の雪があり、その上に車を止めた。今日のコースは全て雪の中だ。 軽アイゼンに40年前に買ったエバニューのローツエのピッケル(チョット恥づい)がお供だ。 雪の登山道には古い踏み跡はあるが、最近のものはない。桧林を抜けると外輪山である明神岳や明星岳 が白いベレー帽のように雪を頂いて見える。30分位で梢の先に金時山が更に登ると時折富士山が顔を出 す。登り始めて45分位で大涌谷の上に出た。北風が吹くと硫黄の臭いが舞い上がってくる。大涌谷の 駐車場や仙石原のゴルフ場が眼下に広がる。神山とお中道から駒ケ岳に向かう分岐点には更に20分程 掛かった。ここから5分程下がり、大涌谷からの道と合流して冠ヶ岳(1409m)まで40分の登りとな る。山の北側であり雪も40cmと深く、足場を確保しながらの登りである。箱根の内輪山の中でマグマ が円頂丘を突き破り溶岩突塔となり、その形が烏帽子に似ていることから冠ヶ岳と名付けたとある。 ご存知と思うが、箱根は明星岳等の古期外輪山と浅間山等の新期外輪山そして中央火口丘群から成る。 外輪山から推測すると2700m級の山であったが、現在の外輪山の内側にある断層から内側が大きく陥没 し、カルデラが出来た。その後に金時山と湯河原の幕山を結ぶ構造線の地殻が開口し、マグマが噴出し て中央火口群が出来たとある。この構造線には金時山・小塚山・台ヶ岳・早雲山・冠ヶ岳・神山・駒 ケ岳・双子山等が連なる。雪の下の山体は安山岩質の溶岩であり、表面にローム層が覆っている。 スイッチバックして25分ほどで神山(1438m)に立った。神山は中央火口群の中で唯一の成層火山で あるが、今から3000年前に水蒸気爆発を起こしてカルデラである仙石原地区を埋め尽くし芦ノ湖が誕 生したとある。山頂からの見晴らしは、梢に遮られて良くはないが金時山から駒ケ岳までの一直線上の 火口群を見ることが出来る。登山道は200mほど下がり、下山に使うお中道との合流点となり、駒ヶ岳 山頂への登りだ。途中で背を屈めて木下を抜けたのだが、毛糸の帽子が引っ掛かり、頭にチィクリと痛 みが走った。帽子を拾い見上げると、山椒バラの枝であった。「俺はここに居るよ。春になったらピン クの花を見せてあげるから、又来いよ」なんて言われた気がした。駒ケ岳山頂のケーブルカーは昨年の 夏で廃止となり、間引かれたロープウエーのみがゴンドラを運んでいた。山頂には訪れる人も少なく、 綺麗な雪面には風紋が出来、太陽の光に輝き綺麗だ。振り返ると富士山が大きく見えた。昼頃から涌き 上がった雲で、愛鷹山・丹沢の大山より遠い所は霞んで見えない。帰路は、短縮コースのお中道(桧林 の中)を使い大涌谷分岐に出て、5時間強の一人ポッチで静かな雪山を楽しんだ。(h18.1.11)