仙人通信35(川乗山1366m) 御嶽山・大岳山と多摩川を挟んで北側に位置する川乗山は、川苔が採れた事から命名されたらしいの だが、何時しか苔が乗に変わってしまったらしい。40年もの昔、下山して鳩ノ巣のおみやげ物店に寄っ た折り、川苔の佃煮のビン詰めが売られていたので、もっともらしい命名だな〜と感心したものだ。 川乗橋・百尋の滝から鳩ノ巣へのコースを3回ほど歩いているので、今回は山の北側、即ち大丹波川・ 獅子口から登るコースとした。JR川井駅から大丹波川に沿って林道を走り、百軒茶屋を過ぎ、さらに 舗装が途切れた先300mほど車を止めた。熊の描がかれた「月ノ輪熊の出没の注意」の看板があり、そ こが登山ルートの基点であった。登山道は大丹波川の沢の面まで約30m降りてから、獅子口小屋跡ま で、丸太橋で沢を横切ることを繰り返しながら高度を上げる、約90分のコースである。 岩陰をミソサザエが囀りながら飛び交い、腹白のカササギ・シジュウカラが時折鳴く以外、瀬音で他の 物音一つ聞えない。ここは奥多摩自然百選(28番)の曲ヶ谷渓谷である。登山道左側の日当たりの少な い湿った崖は、10cm程のオオスギゴケを初めホソバオキナ・ヒノキ・ギン・ヒジキ等の蘚が絨毯よろ しく緑に輝き、蘚の植物園のようだ。羊歯の仲間のシノブによく似たシノブゴケも見ることができた。 ところで植物学では苔の字は、ゼニゴケに使うとのこと、川苔山でなく、川蘚山でなかったのか、なん て考えてしまう。60分程歩くと黒い防寒のシートの下から新芽が出始め、春を告げるワサビ田だ。ワサ ビ田が終ると獅子口小屋跡の階段が見えてくる。小休止後、横ガ谷平に直接登るコースを取った。 獅子に似た岩を過ぎると登山道は、残雪の桧林に入り、かなり急な登りとなる。融雪が凍りつき、滑る ことからアイゼンを着けての登りとなった。40分程で横ガ谷平に着く。尾根道となるが5cmほどの雪 が凍っており、足元を確認しながら30分程掛けて川苔小屋、そして15分で山頂にたどり着いた。山頂 の雪は溶けて、火山灰質の土がぬかるみ、ベンチ以外に腰を下ろす所がなかった。東京地方の天気予報 は終日曇り、明日は雨である。こんな天気にもかかわらず山頂に4人もの山仲間が居るなんて嬉しくな った。山頂は雲もなく青空なのだが、天気予報の通り視界が悪い、南に大岳・御前山・三頭山、西に雲 取・鷹巣山・六つ石、そして酉谷山、北側には有馬山が視界の限界だ。富士山は望むべくもない。 川乗山は秩父層群の黒色の粘板岩等からなる川乗層からできている。その境界線である仏像構造線が雲 取山の北側から日原川を通って御嶽山に向い走っているのが確認できた。自然は凄い!感心感心だ。 車登山の悲しさで、登ってきたところに戻らねばならない。ちょっとコースを捻って、横ガ谷平から踊 平を経由して獅子口小屋跡に戻るコースとした。踊平には林道が延びてきており、ここまで車で入れれ ば川乗山の山頂までは1時間半程度に短縮される。獅子口小屋跡でアイゼンを外し、蘚蒸す沢道を下っ た。休憩を入れて5時間半のコースであった。 (h18.3.9)