仙人通信42(天狗岳2646m)

 西暦888年6月、水蒸気爆発が八ケ岳の稲子岳と天狗岳の東側で発生したと、日本の地質[中部編]
にある。八ケ岳火山の有史上の最初で最後の爆発である。そして稲子岳の二重山稜が天狗岳から見える
と別の本にある。小生は二十歳頃諸先輩に連れられ、渋の湯→黒百合平→中山峠→東天狗→赤岳→編笠
山の縦走をしたことがあるものの、夢中で先輩達の後について行っただけで、天狗岳の記憶が薄い。
写真によくある稲子岳の二重山稜をこの目で見たい。唐沢からなら日帰りで天狗岳往復ができそうだ。
 昨日の雨で濡れた唐沢温泉前に車を止めて、林道の横にある唐沢に掛かった橋を渡った。
コメツゲの木で覆われた沢沿いの道を進と、ゴゼンタチバナやツマトリソウ・マイズルソウが小さな白
い花を付けてお出迎えである。木道の横にニョッキリと、ギンリュウソウも顔お出す。リンネソウも薄
いピンクの花を付けて居てくれる。80分程で渋の湯からの合流点に着く。ここからは、唐沢の源流に向
かい安山岩のゴツゴツした登りである。オサバクサが米粒程の白い花をあちこちで咲かせている。コイ
ワカガミもピンクの花びらだ。50分程で黒百合ヒュッテに出る。昨夜の宿泊客の使った布団が、屋根に
5枚程干されていて長閑だ。ここからスリバチ池にはかなり急な登りとなる。ハイマツの中にコイワカ
ガミや白いツガザクラが顔を出す。石楠花も白や薄ピンクの花である。八ケ岳に10個程ある池で標高
が横岳西池に次いで2番目に高いスリバチ池に着く。池の周囲はハイマツで覆われ、ピンクの可愛いコ
ケモモが絨毯のようだ。岩の間には真黄色のミヤマダイコンソウ、そしてボウフウも白い花を。ここか
らは背後に縞枯状の中山が、西側には諏訪湖が光って見える。岩を縫うこと、90分で中山峠からの道と
合流する、待望の稲子岳が望めるポイントだ。中山峠から150mもの凹地を造り、300m近い崖となって
いる稲子岳が、よく観察できる。水蒸気爆発で東半分が無くなり、山全体の応力分布が崩れて滑り落ち
た凹地のようだ。タカネツメクサの咲く鎖場を過ぎ山頂の標識が見える地点でコゴメクサを発見した。
足場の悪い中、リックから180mmのマクロを出してシャッターを切る。30分で山頂に着いたが、何たる
ことか、八ケ岳全貌が確認できるこのポイントで雲が視界を遮っているではないか。岩伝いに15分程下
がり、鞍部を過ぎ西天狗への15分の登りとなる。岩の合間にイワヒゲが白い花を付けている。西天狗の
山頂はハイマツで覆われているので青天狗と呼ぶらしい。赤岳が雲の間から僅かに顔を出してくれた。
ハイマツの間の岩場を下がり、コメツガの登りとなり、ほどなく第二展望台に着く。ゴゼンタチバナ
ばかりと思っていたら、ヤツガタケキスミレ・ヨツバシオガマ・トラノオ・ミヤマハンショウズル・
ベンケイソウ・ミヤマハタザオだ。嬉しさの余り飛び上がってしまった。第一展望台では花こそ少なか
ったが、雲が取れて蓼科山から赤岳、そして諏訪湖と360度の展望である。ここからはコメツガの長い
下りだ。オサバグサ・コイワカガミ・ゴゼンタチバナと黒百合平までと同じような植生である。90分近
い視界が無い下山で唐沢に着いた。沢山の花に出会えた1日でした。(h18.7.14)