仙人通信48 加入道山(1418m)・大室山(1587m)
丹沢湖の奥に、どっしりとした山容を見せる大室山は、大山と並んで山岳信仰の山であった。
1800年代の初期に編纂された甲斐国史によれば「大群山 高山ナリ麓ヨリ登ルコト五十町余り頂ニ
大群権ノ社アリ」とあるそうだ。一方現在の山名は、国土地理院が「室」の字を使用した為とか?。
用木沢出会に車を置き、白石沢→白石峠→加入道山→大室山→犬越路峠から戻るコースとした。
ご存知のように、丹沢の原形が1500万年程前に形成され、その後1000万年前位から畦が丸を中心
とし、檜洞丸・大室山・鳥の胸山・菰釣山等に囲まれた地区に石英閃緑岩が貫入して、現在の地層
のベースができたらしい。この石英閃緑岩と凝灰岩等の基の岩石との熱変成を受けた岩の観察でき
るコースでもある。風化した石英閃緑岩の白石沢沿いの林道を1時間程進むと、ザレ沢の鉄製の土
砂防止柵となる。尾根の南側を捲くように登ると背中に檜洞丸が見え、木々の間には、白石の滝が
瀬音と共に現れてくる。この滝は、滝全体の壁が大理石で出来ており、一見の価値がある。この辺
りから石英閃緑岩の閃緑物が小さくなりホルンフェルスへと変わって行くようだ。先ほどのザレ沢
を登ると菫青石が、この滝の近くではベスブ石(Ca10MgAl4(SiO4)5(OH)4)があるとのこと。石英閃
緑岩に緑掛かった半透明の石が見えので、観察するも綺麗な結晶の石にはついに巡り会えなかった。
滝の上部からは、30cmもある白い大理石が多くなる。白石沢や白石峠はこの大理石に因んだ名前
かと合点した次第だ。時折カワガラスが尾を立てて、水に潜る姿に見惚れたり、逃げ去る鹿をも送
り、白石峠までの1時間を詰めた。峠から10分程登ると小さなピークで和出村への標識があるが、
そこまでの尾根は殆どが大理石である。富士山を右にみて10分程、緩やかな登りで加入道山である。
山頂は、ぶな・ツツジ等の落葉樹で覆われ、梢の間から、菜畑山や道志の国道沿いの佇まいが、又
正面には、大きな大室山だ。薄曇で弱い日の光であるが、少し汗ばみながら起伏の少ない穏やかな
尾根道を一人歩く。やがてザレ沢の頭で鞍部となる。ここからは、菰釣山と富士山が右手に見える
が、次第に薄い霞みが濃くなり写真を撮るには残念だ。前大室の山頂までは、植生保護のネットが
地面に毛布よろしく張られ、その間を登る。次のピークからは木の梯子や木道となり、尾瀬を思い
出す。やがて犬越路への道と合流する。大室山山頂は直だ。ノンビリ歩いた性も有り、加入道山か
ら1時間15分も掛かってしまった。 山頂で林檎を丸齧りしているとシジュウカラより背中の色が
青いゴジュウカラやキバシリが数羽、近くを飛び交い囀る。半分ほど食べた林檎であるが、木の枝
に突き刺してやった。前述した大群権現さまの社を探したが見出せなかった(残念!)。
檜洞丸・熊笹の峯・蛭ヶ岳・袖平を正面に眺めながら犬越路峠へと1時間ほどで下り、更に1時間
で用木沢出会である。この犬越道からのコースは、昨年檜洞丸からの下山にも使用したが、全体が
石英閃緑岩で覆われている。今日は登山中に人に会うことも無く、又時折ケラがリズミカルに木を
叩く、静かで心が洗われる1日でした。(h18.12.24)