仙人通信51  釈迦ヶ岳(1641m)

釈迦ヶ岳は御坂山地の黒岳の北側に、三角錐の山頂を持ち、茅が岳や八ケ岳からも容易
に確認できる山である。国道137号線の上黒駒から林道に入り、檜峰神社の駐車場に車を
置かせて頂いての登山である。神社から8分程林道を戻り、沢沿いの別の林道を5分程進
むと小さな沢沿いの登山道に入る。落葉樹の林には、昨夜ぱらついた雪で、踏み跡はない。
解けた雪が固く凍り、薄く積った雪道を、軽アイゼンを着けての登りだ。釈迦ヶ岳は、石
英閃緑岩の山で前通信の丹沢の畦が丸と同じである。フォッサ・マグナ帯のグリンタフ層
に、この石英閃緑岩が貫入しており、甲府の北の金峰山・大菩薩・小金沢・そしてこの釈
迦ヶ岳までコの字状に分布(質は異なるが)している。丹沢の石英閃緑岩より、石英の結
晶が少なく、輝きがないように思える。一方登山道にはコウヤボウキの枯れた穂が時折あ
る程度で寂しい。70分程の傾斜の急な登山道は、尾根に出る。真正面に真白な富士山がド
ンと現れる予定が、あいにく山頂は雲の中である。左手には大きな岩が露呈した釈迦ヶ岳
が迫る。道標には、山頂まで30分とある。尾根道は雪・氷が少なく、アイゼンを外す。運
動会の綱引きのような太いロープを持っての登りもある。この一帯は、躑躅が主体で開花
の頃が楽しみな山だ。小さな山頂には、赤い帽子を付けた小さなお地蔵尊が2体祭られて
いた(お釈迦さまで無い?)。見晴らしがよく、雲の中の富士山を除けば360°の大パノラ
マだ。三つ峠・大菩薩・金峰までの秩父・茅が岳・八ケ岳・白く化粧した駒ケ岳や鳳凰三
山・北岳から聖までの南アルプス・先日登った毛無山そして御坂の山々である。眼下には
甲府盆地だ。相模川に沿って上って来た愛川―藤の木(御坂の地名)構造線が黒岳と釈迦
ヶ岳の鞍部を通り、芦川に沿って西に向かうのが確認できる。丹沢・道志・御坂・櫛形・
天守山地はフィリピンプレートに乗り、山梨を目掛けて押し寄せた訳で、釈迦ヶ岳は四万
十や秩父帯の前衝地である。中新世のジオラマが目に浮かぶようだ。30分程富士山から雲
が去るのを待ったが期待できないので、尾根道を黒内の頭へと向かった。轟音と共に沢の
下から雪面を舐めて吹き上がった冷たい風が尾根を越す。ヤッケのフードを被り、軍手か
ら厚手の手袋に替えて歩く。とは云うものの、黒モジの赤い芽やブナの鼠色でマッチ棒程
の固い新芽は、差し詰め「早春譜」の「葦はつのむく」の形容にぴったりな感じである。
このコースは左手に富士山が又前方には南アルプスが広がり最高だ。70分程のアップダウ
ンで黒内の頭に着く。振り返ると左右のバランスの取れた尖った釈迦ヶ岳である。日の光
が山頂に当り輝いたのが、釈迦の光背に見えたのが命名の言われでないかと感じた。山頂
からは唐松の中を鳶巣峠まで下り、1時間程で駐車場の神社に着いた。{H19.2.28}