仙人通信53  蛭ヶ岳(1673m)・袖平山(1432m)
 4月4日の低気圧のお陰で丹沢の峰が雪化粧をした。中でも蛭ヶ岳は何時に無く、白く
輝いて見えた。その事をK氏に話すと、青根から林道が出来て山頂まで3時間半程度で登
れると教えられた。小生の若い頃は夜行日帰の通過点であった蛭に、登る事にした。
林道沿いの登山計画用ポストのある近くに車を置いて、15分程林道を進むと八丁坂の頭
への標識があり、沢沿いの登山道が始まる。5株ほどの咲きたての菫が出迎えてくれた。
釜立沢に沿った緩やかな登を詰め、赤松の林の中を九十九折を登る。啄木鳥のドラムの音
やミソザザエの鳴き声に励まされて1時間10分程で焼山との分岐のある尾根に出た。
東側に丹沢山からの三峰コースが見えるも、やがて檜の木立、西側は唐松で見通しが悪い。
さらに20分程で青根から今一本ある尾根コースとの合流点である八丁坂の頭に出る。
小生の記憶によると姫次までは、丈の低い笹が敷き詰められたプロムナードなんて言葉が
ピッタリの所であったのだが、今は西側の山肌全体が神奈川50選の唐松林になり、昔の
面影すら無い。姫次からは、正面に雪化粧した蛭ヶ岳・檜洞丸から犬越路までが見渡せる。
蛭ヶ岳への尾根は、西側が鋭く落ち込んでいる関係で、大室山辺りまで一望できる。
ご存知と思うが、姫次から蛭が岳・丹沢山・塔の岳・鍋割山は、丹沢山塊の中で一番古い、
塔ヶ岳亜層群の地層であり、緑色岩やデイサイト質の火砕岩層である。後から貫入した石
英閃緑岩により水平の地層が押し上げられ西側に傾き、このような結果となったようだ。
とわ謂えロームに覆われているために岩石の観察は殆どできない。姫次から1時間ほどで、
地蔵平に着く。ここから雪化粧した山頂に向けての急登が始まる。
一息入れ周囲を見ると、雪が解けた地表からコバイケイソウの芽が、こんもりと盛り上が
り、元気を与えてくれているようで嬉しい。木道や周囲の土が流されて歩き難い丸太の階
段を登ること40分程で山頂に立てた。残念なことに低気圧の性で霧が舞い始めていた。
山頂から我家を見つけようと思っていたのだが、近くの丹沢山ですら見渡せない状態であ
る。雨が落ちる前に下山と、慌てて姫次へと戻った。登った事の無い袖平山を30分ほど
で往復して姫次へ戻ると、唐松林の中でじっと、小生を見ている5頭の鹿と目があった。
余りの嬉しさで「皆おいで、お腹空いてるだろ〜」なんて大声を出して(言葉が通じる訳
も無いのに・・)、リックからパンを千切ってやった。30mも離れていない至近距離で見
る鹿の目は、つぶらで本当に可愛かったですよ。今回は4人に出会っただけで、なんとも
静かな山旅ができた。胸毛の褐色のヤマガラ、シジュウカラに似たヒガラ、尾羽に白い羽
のカケス等の囀りを聴き、多くの鳥達とも会話ができた気がした。下山まで雨に濡れるこ
ともなく、7時間強の思い出に残る山路でした。満足(h19.4.12)。