仙人通信56 瑞牆山(2230m)
 広辞苑によれば、「みづがき」とは神霊の山とある。信州峠から見る瑞牆山は、白い岩
峰が天に向いそそり立ち、その異様さから命名がされたのだろうと頷ける。
 瑞牆山荘前の路地の奥にある無料の駐車場からの登りである。鮮やかな新芽に覆われた
唐松そして、カッコウの鳴き声・春ゼミと初夏のスタートで心がうきうきである。唐松林
を抜け、白樺や水楢の緩やかな登りを20分程進と、駐車場奥のゲートからの林道へ出る。
空けるような紫の三つ葉躑躅が又、ベニバナノツクバネウツギも負けじと咲き誇り、20分
程の急な勾配も気にならず、すずらんで有名な富士見平へ到着した。水場近くには、ネコ
ノメソウやコゴミ・ぜんまい・5枚葉ほどのコバイケイソウ・花の大きなサクラ菫が咲き
初夏を告げる。唐松越しに瑞牆の岩峰が眺められる尾根道をさらり20分ほど登ると小川山
との分岐となる。ここから八丁平の鞍部まで、山の北斜面を15分下る。鞍部にある小さな
せせらぎを石伝いに渡ると八丁平だ。アズマ石楠花や赤いヨウラクが咲き、ベンチもあり
と休憩には最高のポイントだ。これより山頂に掛けては、日の差し込まない小さな沢沿い
であるので、岩が濡れており、滑るうえに梯子やロープの急な登りが続く。仰ぐと岩峰が
頭上を覆う。地震でも起きたらと不安にもなる。地震が無いことを祈りながら山頂を目指
した。先ほどのせせらぎまではデーサイト質の空洞の多い岩であったが、風化の進んだ石
英閃緑岩へと岩質が変わってきている。文献によると、瑞牆山は、金峰山と同じ石英閃緑
岩が主体の山で、金峰・笠取・大菩薩・釈迦岳と甲府盆地をコの字に取り囲む花崗岩帯で
ある。山頂に掛けては、赤紫のアズマ石楠花のトンネルがつづき、花の好きな小生にとっ
ては、この上なく嬉しい限りだ。ミヤマカタビラの白い花・マイズルソウも小さな黄緑の
花芽を付け出迎えてくれている。1時間程で小さな露地に出た、大ヤスリ岩下である。清
楚な山桜が咲き、その先に残雪の富士山の山頂が顔を出している。さらに20分程、岩の間
を抜け登ると、大きな石英閃緑岩の山頂に立てた。北側はシラビソが視界を遮るが、野辺
山・八ケ岳・甲斐駒・鳳凰・茅ヶ岳・御坂・富士そして五丈岩の金峰と申し分のない展望
である。ホッサマグナの西の縁や佐久の岩村田―若神子線、かつて湖であった野辺山高原
を昼食のおかずに太古のロマンを食べた気になった。(そうそう野辺山の先の海ノ口から
来られたと言う元気な叔母様に美味しいフキをご馳走になり、お餅のお土産まで頂いた。
瑞牆=この叔母様かな・・・?)。富士見小屋下の里宮神社にお参りしたご利益か、ユリ
科のタケシマラン(竹縞蘭)や濃い紅色のクリンソウとも出会えた、そんな花街道の山路
でした。(h19.5.4)