仙人通信57 皇海山(2143m)
 皇海(すかい)山は、日光白根山と赤城山のほぼ中間に位置し、庚申山奥院とし、開道
上人が鎌倉時代に開山したことや深田久弥の100名山として有名な山である。吹割の滝か
ら林道を入れば2時間半程度で山頂に立てるとある。雪も消えたので腰を上げた。
吹割の滝から片品川を渡り、栗原川に沿って切り立った白亜紀〜古第三紀の赤茶けた火山
岩(流紋岩)のダートコースを50分近く走るとトイレの準備された駐車場に着く。橋を
渡り、林道を400mほど進むと沢沿いの登山道である。マタタビが白い花を・石楠花も僅か
であるが花を付けているのが見られる。このコースは沢に沿って唐松の林を、鋸山と皇海
山の中央にある鞍部まで詰める緩やかな登りである。雪が解けて水嵩の増した瀬音・カジ
カそしてカラマツ林に付き物の春蝉の大合唱である。白い花のヘビイチゴ・ハタザオ似た
オクヤマガラシ・花がオサバグサに似たズダヤクシュ・葉6枚がリングになっているムグ
ラ、そして丸いボンボンのようなカラマツが登りを楽しませる。しかし何とも白い花ばか
りである。1時間程登った所に山頂を示す道標がある。道標の示す先の小さな沢と大きな
沢の分岐であり、その中間に道を見つけて詰めて行くと踏み跡が乏しくなった。周囲を
よく見ると大きな沢の対岸にジグザグ道を発見して、そちらに移ってみた。しかしやがて
踏み跡は消えてしまった。雪が解けたばかリで踏み跡が危ういのだ。獣道に入ってしまっ
た。原則の「戻る」は悲しく思い、木葉越しに鞍部の位置を考え右に捲きながら登山道に
出れるのを期待した。膝丈であった熊笹も1mほどとなる。枯れ葉の中にギンリュウソウ
がキセル状の花を擡げ、カジカ蛙が岩を跳んだりする発見もあったが、過ぎる不安を抑え
獣道を頼りに登り詰めた時だ、シラビソの先の尾根道を下山する人影を見た。(ホ!・・)、
30分近くロスしてやっと尾根道に出れた。尾根道は、然程急な登りではないが、雪解けや、
一昨日降った雨で濡れており滑りやすい。足元にはミヤマカタバミやツマトリソウが又コ
バイケイソウの蕾も大きく膨らみ程なく開花である。山頂近くではミツバオウレンが群生
していた。天を指した庚申二柱大神と書かれた3mもある青銅の剣(昭和の後期の物か?)が、
何か物悲しく見えた。山頂では霧が舞い、100名山を堪能することは出来なかった。
皇海山は第四紀に活動した火山で、溶岩円頂丘だそうで、密度の低いスコリア等が山頂の
岩に認められ、火山で有った事を物語る。鋸山を見ながら鞍部まで下がり、正規の下山道
を下がり、踏み違えたポイントの岩の上に熱中症予防に持参した塩を盛り塩として、無事
に戻れた事と、己の愚かさに手を合わせて反省と感謝をした。駐車場には、小生の車だけ
が残されていたが、横に雌鹿が座り込み10m近くまで寄ると立ち上がり、静かに山に消え
た。この鹿に見守られていた気がして「ありがとう」を言った。(h19・6・28)