仙人通信58南八ケ岳(2899m)
 鮮やかな青のウルップソウ・風に靡くチョノスケソウそんな八ケ岳の稜線が目に浮かぶ。
美濃戸口から硫黄岳・横岳・赤岳・阿弥陀をこの時期に訪れて見たくなった。天気は、持ち
そうだ。美濃戸口の高原ロッジの駐車場に車を置いて、美濃戸山荘まで1時間の林道歩き
がスタートだ。ピンクのシモツケ・紫のウツボグサ・トリアシショウマ・土手には薄ピン
クのイブキジャコウ・黄色で素朴なヤマオダマキ等が咲く。車で過ぎれば10分足らずだが、
元気に咲く花に会えて、英気を貰った感じである。山荘を過ぎ、橋を北沢に折れ、赤岳鉱
泉まで瀬音を聞いての2時間の登山道が始まる。ヤマオダマキ・オトキリソウ・ショウマ・
テガタチドリ・そして八ケ岳を代表するオサバクサと、汗を吹き飛ばしてくれる。更に2
時間シラビソの林を進むと、ハイ松に覆われた赤岩の頭である。ここから稜線でキバナ石
楠花も満開である。蓼科山を中心に北八ケ岳が、又南には馬蹄形に連なる南八ケ岳が一望
できる。3400mだったと言われる古阿弥陀岳が20万年前に立場川火砕流や韮崎岩屑流とな
って崩壊を繰り返し中央が抉り取られ、現在の南八ケ岳の山容が出来上がったと思うと
、自然の脅威に感服する。中でも大同心の突き出した峰には、霊さえ宿っているようだ。
黄色に揺れるミヤマダイコンソウ・ピンクのタカネシオガマがシャッターを切れって言っ
ている中を30分程登ると硫黄岳(2760m)の山頂である。北側の眼下には、抉り取られた
爆裂火口が黄色い硫黄質の地層を肌蹴て見せる。展望は360°申し分なない。今日の宿りは、
オオダルミの硫黄岳山荘である。コマクサの群生を眺めての20分程のダウンだ。山荘では
ヘリの荷解きを応援したり、峰の松目に沈む夕日・そして消灯までの団欒と思い出を刻ん
だ。4時に、東の空に金色の筋が走る。5時のご来光を、横岳の山頂で見たくなり、山荘
を出た。大同心に霧が諏訪側から吹き上ったり、コマクサを足元で感じたり、そんな幻想
的な情景の中を1時間、山頂(2829m)に辿り付くと、期待の金色の太陽が上がり、遠くに笠
雲の富士山が、雲海の向こうには、秩父の山並が黒々と浮かぶ。辺りは漸く明るくなり、
ツマトリソウ・キンポウゲ・コマクサ・チョウノスケソウ・オヤマノエンドウ・チシマ
キキョウ・ハクサンイチゲ・ミヤマダイコンソウ・ミヤマシオガマ・タカネツメクサ・ツ
ガザクラ・ベンケイソウ・ムシトリ菫・キ菫が梯子や鎖場の続く風衝帯に咲き誇る。山荘
で、綺麗にウルップソウが咲いているとの情報を得て探したが、ついに、巡り会えず(残念!)。
赤岳山頂(2899m)には7時半に着く。山頂下の文三郎尾根の標示板近くでは、紫の可愛いミ
ヤマオダマキやハクサンイチゲ・ミヤマダイコンソウ・ハタザオ・イワウメがガイド役だ。
中岳を経て登りのキツイ阿弥陀岳を1時間でピストンした。ここでは、ヨツバシオガマ・
イワヒゲ・ボウフウ・グンナイフウロである。行者小屋分岐から森林帯を45分で行者小屋
へ、さらに2時間で美濃戸山荘だ。2日間・16時間の花の山旅を楽しめました。H19.7.24