仙人通信59 大菩薩嶺(2056m)

 40年位前に2度ほど大菩薩嶺に登った時、稜線にはマツムシソウやヤナギランが見事
に咲き誇り、今でも目に焼き付ついている。その当時は、裂石からの登山であったが、今
は上日川峠までマイカーで入れることから、登山時間が3時間も短縮され日帰りもできる。
石丸峠→大菩薩峠→大菩薩嶺→カラマツ尾根を一周する5時間弱のコースである。
上日川峠の無料駐車場の横にある道標に従い、カラマツ林の中のコースを石丸峠に向かっ
た。30分程で大菩薩湖畔からのコースと合流点にある沢沿いの休憩所に着く。周囲には、
ヒヨドリソウ・ギオン・オトキリソウが笹の中に見られる。5分も登ったろうか、先ほど
の峠から大和に抜ける日川林道だ。林道を横切り急な登りを30分程で別の林道とクロ
スする。小金沢山のみであれば、この辺に車を置くのが良いのかもしれない。10分程で、
カラマツの林から笹の原となり、目の前に小金沢山が姿を現す。足元には、紫のウツボグ
サ・黄色のギオンや二ガナ・坊主頭のワレモコウ・華奢なウメバチソウが、又笹の中には
オレンジ色のコーリンカが目立つ。歩き初めてから1時間45分で石丸峠に到着だ。
このコースの岩は、デーサイト質の柔らかな物ので、金峰山から連なる石英閃緑岩は見当
たらない。大菩薩嶺から続く四万十帯の小仏層(ジュラ期)のようだ。黒岳や雁の腹摺り
山は、石英閃緑岩であることを確認しており、柳沢峠→上日川峠→小金沢山→黒岳あたり
が岩層の境界のようだ。峠から15分程笹原を登ると熊沢山の山頂である。山の北面は苔む
すシラビソ等の森林となり、15分下ると介山荘(小説大菩薩峠の作者中里介山)のある大
菩薩峠である。小屋は現在改造中で利用できないようだ。(ここからは、登山者も多くなる)
ヤナギランやマツムシソウを峠の近くで探したが見当たらなかった。雷岩までは、植物保
護のロープが張られた笹の原の稜線で、大菩薩湖辺りまでの視界が利くが、入道雲が涌き、
雲海に浮かぶ富士山・甲斐駒や八ケ岳は望めなかった。賽の河原ではハナイカリソウ・
アザミ・ハハコ・ウスユキソウ・ハクサンフーロ・ボウフウそして、アキノキリンソウや
コーリンカ・ヨメナが目立つもののやはり、ヤナギランやマツムシソウは1本もない。
5年位前に鹿に全て食い荒らされたとのこと。残念!! その様な中、雷岩で白とピンク
のホツツジと出会えて心が和んだ。大菩薩峠からゆっくりした歩調であったので、1時間
30分を要して大菩薩嶺に着いた。山頂は以前より木々に覆われた様で、日本百名山の三
角点が悲しく見えた。雷岩に戻り福ちゃん荘に向け下山、ミヤマヒゴタイやヤマホタルブ
クロ・マルハダケフキ・ギオン等がカラマツ林に咲く。福ちゃん荘からは、ツリブネソウ・
キツリブネソウ・ソバナも加り、多くの花々に、会えたものの、目当てにしていた花に会
えず、何か割り切れぬ秋を感じた山路でした。(h19.8.24)