仙人通信62 子持山(1296m)

 子持山は赤城と榛名の北側に位置し、一等三角点を有する展望のよい山である。
関越高速の赤城インターチェンジから、僅か20分程で登山口である子持神社の奥院手前の
駐車場に着く。唐沢川に架かる6号橋の右の林道から獅子岩→柳木ヶ峰→山頂→柳木ヶ峰
→オオダルミ→林道に架かる8号橋→駐車場へと戻るコースとした。
 子持山は赤城・榛名の火山と比較して、標高1296m・基底の直径7Kmと小粒だが、カル
デラを持ったレッキとした成層火山で、溶岩の主体は新第三系の溶結凝灰岩や古期火山噴
出物から成ると文献にはある。(崩壊が激しく、現在カルデラは消滅している)
6号橋の道標に従い細い林道を5分程進むと、サラシナショーマ・アザミ・アキノチョウ
ジ・テナンショの赤い実が出迎えてくれる、杉林の中の急な登りからのスタートだ。道は
尾根の凹部で陽射が少ない湿った土で滑りやすい。平日のためか行き交う登山者はなく静
かな山路で小生の腰に付けた熊除けのカウベルがやけに響く。30分程で東側の尾根に出
る。杉林から、黄色に色付き始めた小楢やニシキギ等の落葉樹林帯となり、周囲は明るく
なるも、木葉で視界は開けない。1時間程で電波用の白い反射板があるポイントに着く。
更に10分程で獅子岩の東側の基部に着き、東側を捲くようにして10分程で、獅子岩上へ
の分岐点である。獅子岩は垂直に割れ目の入った節理が見事で、獅子の頭によく似た火山
岩頸で大黒岩とも呼ばれている。北面の岩には、かつてカルデラであった湖底の堆積物が
認められるそうである。岩の上に立つと子持山の西側が爆裂により崩れ落ちた様子がよく
観察でき、目下の利根川を挟んで榛名の山が迫ってくる。この辺りからは、小楢が黄色く、
ドウダン・ミツバ・山ツツジそしてモミジも赤く色づき、青空の下で見事である。
一つ目のピークの近くで10人程の迷彩服の自衛隊員が下山して来るのと遭遇したが、彼ら
は私の為に道を開けて、待っていて下さったのには、頭が下がった。獅子岩から40分で小
さな石の祠のある柳木ヶ峰であり、オオダルミへの分岐点である。更に15分で子持山の
山頂である。さほど大きくない山頂には、10名程の高齢者のグループが昼食を広げ、にぎ
やかであった。三角点の北側には大きな岩があり、谷川岳方面の視界を遮っているが、北
東面には武尊山・日光白根・男体山・皇海山が、北西面には三国峠が、西南には榛名が眺め
る。子持山は高い山ではないが、展望の利く一等三角点の山である事を実感する。男体山
の山容が、見る方角でこんなにも異るのも面白い。団体さんが去った山頂でノンビリして
から先ほどの柳木ヶ峰に戻り、かつての爆裂火口であるオオダルミへと尾根伝いに下がっ
た。オオダルミは獅子岩とほぼ高度が同じことから獅子岩の写真をと考えていたが、木々
の葉でポイントが探せず残念でした。ここからは、コースを左に折れて唐沢川の源流に沿
って林道へと下る。薄暗い沢沿いの林の中に、紫のトリカブトやアザミが咲き誇り、心を
和ませてくれた4時間弱の秋の山旅と成った。下山後、リックに手を入れると小楢のドン
グリが一つあった。子持山からのプレゼントであったようだ。(h19.10.24)