仙人通信65 十枚山(1726m)
十枚山(じゅまいさん)は阿部川と富士川に挟まれた竜爪山地の北部に位置し、新第三系
の地層の山である。国道52号線にある富沢道の駅で偶然南部町のパンフを手にし、山梨県
側からも登れる事を知り、チャレンジする気になった。
成島から車で20分ほど剣抜大洞林道を登ると、十枚山登山口の看板があり、2・3台駐車で
きる。この地点の標高は700m程度であるので約1000mを登る事になる。
整備された檜林の急斜面からのスタートだ。20分程登ると栃尾根下の段との道標が更に20
分程に中の段とある。この辺りから北側はブナを中心で、桜・水楢・紫式部等の木々も見
られる。南側は檜林で視界は遮られ、オマケに日も当らない登山道である。それでも北側
には、梢越しに大光山(おおぴっかり)が、又その南側に目指す十枚山が雪で白く化粧して
眺められる。大光山の沢に近いところに薄青い色の崖崩れが見える。フォッサマグナの
西の端(小淵沢―静岡構造線)であろうか。阿部峠から十枚山の東側(小生が立っている
辺り)を通り青笹山の東から田代峠を越えて、興津川へと構造線があると文献にはある。
登り初めて1時間で上の段に着く。雪も5cm程になり、足元に不安を感じアイゼンを付け
た。更に35分程で1.5m程の平らな石の硯石に着く。身延の早川にある雨畑の粘板岩の
硯を思い出して、雪を落として硯石を見たが、砂岩のようだ。少し登ると岩小屋と案内板あ
り、人一人が屈むんで避難できる程の岩陰がある。登山道は緩やかな登りとなるも北東の
斜面となり、雪が20cm程と深くなり、シラビソに巻かれたピンクのテープと靴の踏み跡が
コースの頼りだ。雪に埋もれ、沢頭をトラバースする。アイゼンの8本爪のグリップを確
認しながら、40分掛かけて十枚山峠に辿り着いた。峠の正面には、聖・光岳等の南アルプス
が、振り合えると富士山がブナの梢越しに聳える。尾根は雪が少なく歩き易く、40分程で
十枚山山頂に辿り付いた。山頂正面にある鐘を思い切り鳴らしてみた。音色は、昭和26年
鶴川村の小学校に入学した時、小遣いさんが鳴らしていたあの鐘の音に聞えた。
昭和28年に市制が引かれ、鐘も電気式のベルに替わり、卒業記念にチャイムを記念に置い
てきた事などが思い出された。鐘よ昔の思い出を新たにしてくれてありがとう!!
山頂は、タケカンバと大光山で北側を遮るものの、東側には富士山がその下には南部の町
が富士川に沿って見える。東北の南部は、甲斐源氏の武士によって、鎌倉時代に治められ
た土地で、ここ南部町が南部氏の発祥の地である。頼朝の命で東北に移住した人々に心を
馳せた。又西側は十枚山断層が阿部川に沿って走っていることもあり、急激に落ち込んで
いる様を眺めた。休憩後、25分程で峠に戻り、北面に雪のへばり付いた下十枚山に登った。
6時間半程のたった一人の山を満喫しての下山となりました。(h20.1.9)