仙人通信66 塔の岳A(1491m)
 2月3日、太平洋側を低気圧が通過して、関東平野に雪をプレゼントした。我家の居間
から、白く化粧した大山や蛭ヶ岳・仏果山が間近かに見える。先日高校時代の旧友と山談
義で、バカ尾根(大倉尾根)の話となった。赤土の尾根も階段が随分整備されたとのこと。
小生の知るバカ尾根と言えば、赤土の堀の中をひたすら登ったことか。
県立公園の駐車場から、県道を大山祇神が祀られた山神社方面へ進むと10分程で登山口と
なる。焼き物の登り窯辺りからは、先日の薄い雪が積る緩やかな登りだ。両側の杉や檜は、
40数年前は、か細かったが40cmへと堂々たるものだ。梢越しには雪をいただいた二の塔・
三の塔が穏やかな青空に映える。10分程で大倉高原山の家と杉林を進むコースの分岐であ
る。杉林を進む事20分で尾根へ出る。尾根の西側の視界は開け目の前に鍋割山である。
僅かな急登で見晴茶屋に着く。昔はこの辺りで視界が広がり、海の方まで見えたのだろう
が、今では檜等が伸びて遠望が利かない。積雪は序所に増すも登山道が整備されているお
陰で滑る事も無く25分程で駒止茶屋だ。70歳代の男性が両手にストックを持って駆けるよ
うにして下山して通り過ぎていった。お元気と言うよりは、滑って骨切でもと余計な心配
が過ぎった。この老人の性だろうか、小生と同年輩の5人程のグループが、アイゼンを着
けるべきかで揉めていた。堀山からは北面の下りである、小生はスパッツとアイゼンを着
けた。登り初めて約2時間、掘山の家に着く。これより先は嘗て赤土が剥き出しに成った、
滑る尾根道であったが、20cm程の積雪も踏み固められ、階段も歩きやすい。登山道の両
側は、登山者の支援でハンノキや山ウツギ等の樹が植えられ、鹿の食害を防ぐネットまで
設けられ再生が始まっている。尾根の西側は、鍋割や檜洞・畦が丸辺りまで見渡せる。20
分程で檜林の中から作治小屋からの登山道が合流する。花立の小屋までは後20分だ。雪の
間から顔を出す緻密で青みを帯びた岩は、塔の岳亜層群と呼ばれ尾根伝いに丹沢山・蛭ヶ
岳へと繋がる岩帯である。花立からは展望が開け、大山から表尾根そして鍋割から檜洞や
蛭ヶ岳等の西丹沢が一望できる。金冷の痩せ尾根を過ぎ鍋割山への分岐に到着、出発して
丁度3時間であった。積雪も40cm程と増し急勾配の登山道で、何方かが尻橇よろしく下
ったようで、滑り台状の登山道をアイゼンの効きを確認しながら30分で、漸く塔の岳山頂
に着いた。塔の岳山頂には、嘗て石の塔があったそうで山名の元であると何かの本で見た
が、関東大震災で倒れ落ちて現在はない。前回見えた富士山は、裾野から雲の中であるが、
真鶴半島から江ノ島までの海岸線や、丹沢山・蛭ヶ岳と檜洞の中央に秩父の甲武信までも
確認出来た。尊仏小屋の裏の積雪は70cmであるが、赤い花芽のアセビが春を待つ。
バカ尾根の先端の大倉高原山の家の前ではフッキ草が白い花芽を持ち上げていた。
直ぐそこに春を感じたバカ尾根歩きでした。   (h20.2.5)