仙人通信69  浅間隠山(1756m)
浅間隠山は、浅間山と中之条のほぼ中央に南北に裾を広げ中之条方面から浅間山を望もうと
すると、擂鉢状の山体がスッポリと隠すことから名付けられた二等三角点の山である。
高崎と北軽井沢を結ぶ県道が山の肩1300mの二度上峠まで高度を上げてくれるお陰で、山頂
までの標高差450mをピストンする約3時間のコースである。
道路脇の登山口の標識から100mほど進んだカーブの地点にある駐車スペースからスタート
だ。小さな沢に沿った登山道は、芽吹く前の唐松林で、梢の先に青空が覗けて明るい。
振り返ると鼻曲山の尖った鼻が真近でこちらを向いている。秋に落ちた茶色い唐松の絨毯を
踏んで、なだらかな斜面を15分程登ると尾根に出る。ダケカンバの白い幹や梢越しに浅間隠
山山頂の笹原がよく見える。尾根道は更に緩やかとなり岩淵山の北東面を捲く。日陰の所で
は残雪の登山道となるもアイゼンを着ける程でもない。登山道沿いの木の幹には黄色のペイ
ントで山頂が示されており、迷う事は無さそうだ。10分ほどで3番と書かれた北軽井沢分岐
である。春と言うのに雪解けが遅れ、スッポリと白化粧した浅間山が顔を出す。
雪解けのぬかるむ唐松林を進むと、暖かい性か慌てて孵化したのだろう、黄土色に斑紋の羽
の蝶(岐阜蝶?)が群がり飛び交う。「おいおい早過ぎないかい・・食べる物有るんかい・・」
寒さの再来で凍えるであろう彼らの命を心配してしまう・・。
20分程で鞍部となり、水楢・ダケカンバ・山桜等の落葉樹が覆う急勾配の山肌が迫ってくる。
登山道は浅間山や鼻曲山火山等の噴出物であるデイサイトの小石が敷きつめられた緩やかな
登りが続く。雪解け水を含み滑りそうなで、一歩一歩確かめながらの登りだ。腰丈程の笹の
合間に躑躅の木が多くなる。何とも花芽はオーバーを着て小さく寒々しいが、良く見ると紫
掛かって、木々のトキメキが聞え、春を感じる。雪で覆われた北面とは対象的な南面の梢が
紫に染まる山肌を想像するには十分だ。30分程登ると、わらび平コースの分岐で山頂へ向かっ
て直線の尾根道となる。右手には角落山や榛名の山を、左手には浅間山を眺めての登りであ
る。程なく膝丈の笹原となり山頂が見える。ゆっくり登ったが1時間25分程で山頂に立てた。
青空の下で360度の展望は食事を摂るより最高のご馳走である。
真白の浅間山・寄り添う湯の丸山・雪化粧の四阿山に白根山、思い出が蘇る八間山や稲包山・
谷川岳、武尊の峰・皇海、手前の榛名山や角落山鼻曲山と近くの山々はバッチリ望める。
つがいのヤマガラが近くで囀り、戯れて飛び交う。一人占めした静かな山頂だ。
彼らに会えたのも、今日登って来たからだなんて、勝手に悦に至たる。山頂の展望を満喫し、
ノンビリとした時間を味わいながら下山をした。県道33号線で地蔵峠を越えて、松井田
妙義インターを経由して帰路に着きました。(H20.4.15)