仙人通信71 千頭星山(2138m)
仙人通信71千頭星山(2138m)
 千頭星(せんとうほし)山は、糸魚川―静岡構造線の渓谷を挟んで鳳凰三山の東側に対
峙している。甘利山の肩にあるグリーンロッジ前の駐車場(約1640m)からの登山が一般
的であるが、椹池(1200m)の駐車場から県道を横切りながら前述の駐車場→甘利山→千
頭星山をピストンするコースとした。人影もない椹池では、カッコーと蛙の大合唱である。
駐車場横の登山道には、真赤な山躑躅の花が・湧き水場では沢山のクリンソウが迎えてく
れた。県道沿いに歩くと、ズミが見頃で赤いホッペの蕾・白い花が可愛いらしい。マムシ
ソウ・そして俯き加減の乙女のようなチゴユリ・アケボノ菫も見られる。
5mm程に伸びた唐松の若葉の登山道は明るく、鶯も鳴いて長閑だ。黄色に埋め尽くすキジ
ムシロ・ピンクのアズマイチゲ(花の状態からイチリンソウ?)・白い柔肌のようなヤマシ
ャクヤクの群落・紫のラショウモンカズラやヒメ菫・タチツボ菫・花弁の大きいサクラ菫
が、登山道を埋め尽くす。白いミヤマカタバミ・サイコ・ツマトリソウも見事だ。
こんなに多くの花に逢えた上に一人占めできた喜びは、なんとも言いがたい1時間30分の
至福の時間であった。グリーンロッジ前の駐車場には、5台ほどの登山者の車が有るだけ
で人影も無い。ここから甘利山山頂までは、両側にロープが張られ整備された20分余りの
登山道となる。一面にあるマイズルソウは、丸い緑の花芽を葉の上にチョコント出してい
るが固い。ミツバ躑躅も茶色い包の中だ。フデリンドウ・タチツボ菫そして赤いヤマボケ
がやけに目につく。明日の天気は雨との事、山頂の360°展望も千頭星山以外は霞んでいる。
山頂からは緩やかな笹原を下り、続いて奥甘利に向かって唐松とシラビソの林の登りとな
る。白いガマズミや小さな花の山桜(富士桜)が登山道を覆う。この春に目覚めた熊が爪
研ぎをしたのだろう、シラビソ等の樹皮が剥き採られ無残である。剥ぎ取られた樹皮が辺
りに落ちて無い所から、食べたのだろうか。安全確保のためリックからラジオを取り出し、
山梨放送を鳴らして熊除けをした。そうそう「千頭」とは獣が多く居る、そして「星」は
法師が訛ったもので「獣が沢山住む法師の形をした山」との解説がインターネットにあっ
た。甘利山から80分で御所山・青木鉱泉方面との分岐で、尾根はほぼ平坦の笹の原となる。
残雪の地蔵・観音・薬師がダケカンバ越しに望める。20代の頃ゴールデンウイークに三山で
雪と格闘した思い出が蘇り、友を思い出し安否が急に気になった。残雪が僅かにある最後
の急登を詰めると千頭星の山頂である。登り初めて3時間30分、シラビソ・唐松にサルオ
カゼが風に揺れる2等三角点の山頂に立てた。
帰りの県道では、3頭程の群を成すサルが20頭、又丸々太ったアナグマを窓越しに眺め
「千頭」を肌で感じ、6時間半の心を洗う山旅が出来た事に感謝した。(h20・5・23)