仙人通信72 草津白根山(2171m)・芳の平湿原
 草津白根火山は万座・草津温泉の中間に位置し、本白根・逢の峰・湯釜を持つ白根の3
つの火砕丘と6つの火口からなる。万座・草津温泉を結ぶ国道292号の峠(弓池のあるレス
トハウスの駐車場)からのコースである。バスから降りてくる観光客が湯釜に向うのを尻目
に道路南側にある逢の峰への階段を一人登る。山頂までの20分、ツマトリソウ・ゴゼン
タチバナ・マイズルソウ・コケモモの白い花達に迎えられた。しかし、南側のスキーゲレ
ンデは真黄色のタンポポに埋め尽くされ、自然が壊されて悲しい。10分ほどゲレンデの端
を下ると本白根中腹までのロープウエーの乗り場である。ロープウエー右手の林の中を進
むと、マイズルソウ・ミツバオーレン・タケシマラン・紫のエンレイソウ・山桜が緩やか
な登山道の両側を飾る。20分程で先程のロープウエーからの道と合流、ほぼ平な登山道で
は、ピンクのコイワカガミ・クロマメノキやコケモモも加わる。15分程で本白根の火口の
上に出る。擂鉢状の火口の渕を回りながら本白根の山頂へと進む。しそ輝石安山岩の砂礫
にはピンク・真紅のコマクサが一面に咲き誇る。ツマトリソウ・ガンコウラン・コイワカ
ガミも加わり、にぎやかな天国の出現である。万座との分岐を過ぎ、山頂へは木製の階段
を登る。稜線はコマクサにクロマメノキ・コケモモの開花最盛期の登山となった。
駐車場から90分で本白根山頂だ、今日は梅雨の合間の晴れであり、水蒸気で遠望は利かな
いが、近くの白砂・戸隠・四阿山(浅間は雲の中)までは見える。休憩後、登って来たコ
ースを駐車場まで戻り、亜硫酸ガスの臭いの漂う白根の南東の裾を捲く様に1時間掛けて、
赤い屋根のヒュッテの待つ芳の平へと向かう。レストハウスからは亜硫酸ガスの影響であ
ろう、植生は一変して、小さなダケカンバ・唐松に綿毛を付けたミネヤナギ・萱・クロマ
メノキ・イタドリが点在し荒涼とした状況だ。そんな中でも、健気にも米粒大の白やピン
クの花を付けるミネズオウが観られる。30分程して雪解けの進む沢を渡ると、あの赤屋根
が見えてくる。周囲は笹原となり、1mほどの雪積の沢に沿った緩やかな下りコースでは、
白い花を付けたナナカマド・クロマメノキ・ツマトリソウに混じりコケモモ・イワナシ・
ウラジロヨウラクの花も見える。赤い顎に白い花のアカモノ(イワハゼ)も可愛らしい。
沢を越してヒュッテから、芳の平を周遊できるコースが始まる。白いワタスゲが穂を靡か
せ、池塘に白い雲と映え、カッコーや鶯がおしゃべりする様は、長閑でずっとこの場に留
まって居たい気持ちにさせられる。木道を進むとムラサキヤシオ躑躅が上品なピンクの顔
を覗かせる。ダケカンバ・シラビソ・トウヒレンも若葉が萌える。白い小さなウスバス
ミレ・ハクサンシャクナゲそして崖では、イワカガミ・コケモモ・ツガザクラ・タカネヒ
ゲカツラ・スギカズラも元気である。沢山の花たちと会話が出来、何とも幸せな6時間の
山旅ができた事にただただ感謝・感謝の一日でした。(h20.7.2)