仙人通信73 源氏山(1827m)・大峠山(1907m)
 源氏山・大峠山は巨摩山地・櫛形山の南に位置し、早川側の西山温泉と富士川側の十谷
温泉との中間に聳える山である。増穂町と孝謙天皇が幽閉された奈良田を結ぶ丸山林道の
峠(1700m)から両山をピストンすることにした。峠からは足馴峠に向う新規の林道の工事
が始まっており、工事の崖の上にある唐松林の中を進む登山道が今日のコースである。
オカトラノウ・ベニバナシモツケ・ヤマオダマキ・キツリブネソウが咲く林道脇に車を置
き、源氏山の標識のある尾根筋に入る。踏み跡を白いヨツバヒヨドリが覆い隠し、訪れる
人の少なさを示す。ホトトギスが鳴き、卯の花・ヤマアジサイ・薄紫のコアジサイ・赤紫
のママナコ・ホタルブクロが咲く静かな登りである。15分程で尾根の西側となり、先程の
足馴峠に向かう林道の崖上のアップダウンとなる。霧が取れて農鳥から笊が岳を結ぶ尾根
が浮かびあがる。鳳凰三山の東の谷から早川に沿って糸魚川―静岡構造線が、櫛形山から
林道に沿って走る櫛形山断層の位置を想像し廻らす。黄色いハナ二ガナ・キンレイカ・小
さな白いスダヤクシュ・カニコウモリ・ムグラそして紫の穂を垂れるクガイソウ・真白な
トリアシショマの花園が続く。ただ立ち止まるとスズメ蜂が50cm位の距離で羽音を起て
て飛び回るのには閉口した。沢筋では拳大のデイサイト質の岩が認められる。伊那凝灰角
礫岩で櫛形山から繋がる累層のようだ。眼下に工事事務所がある辺りからは急な登りが続
き、歩き始めて1時間20分程で大峠だ。峠の源氏山を指す道標はリッパであるが、大峠山
と右仙城と書かれた標識は目立たない木片だ。右に行けば仙城沢から早川方面の意味らし
い。ここからは尾根の東側となり背丈程のイタドリやキイチゴの棘に悩まされ、道案内に
不安を抱きながら下り進む。クガイソウ・トリアシショマ・イチヤクソウ・サワギク・オ
レンジのクルマユリ・一面に咲く白く清楚なセンシュガンピ・小さな白いボンボリのカラ
マツソウ、そして源氏を代表する白いツバメオモトは青い球形の実を付けている。20分程
で古びたトタンが散乱する造林小屋跡である。ここから山頂までは、25分程の登りだ。30
cm程の棍棒状のオニク・花が落ちた岩カガミ・枯葉を持ち上げた真白なギンリョウソウ
に迎えられ、源氏山山頂に辿り着く。源氏山は甲斐源氏の祖先である新羅三郎義光を崇め、
命名されたものらしい。途中で会った地元の人の話では、日本の中で一番高い山城が在っ
たとのこと(狼煙台かな?)。しかし期待した山頂からの展望は、何も望めず残念!。先程
の大峠まで戻り大峠山に向う。小生を先導するかのように、梢で鳴くこのはづくを追って
山頂を目指す。尾根では、ヤマオダマキとクガイソウ・ギンリョウソウ・コアジサイが綺
麗だ。大峠山(烏守山)は一等三角点の山であるが、源氏山同様に視界はよくない。50分
程で大峠に戻り、登って来た登山道を戻った。所要時間5時間余りのウッドビッチに満た
された静かな唐松林の山旅を楽しみました。(h20.7.23)