仙人通信75 白毛門(1720m)
白毛門(しらがもん)は、湯檜曽川を隔てて谷川岳と対峙し、一の倉沢やマチガ沢が目前
にパノラマとなって展望できる山で有名である。今日は上越本線の「土合駅」近くの駐車
場からのピストンである。キクイモ・キンミズヒキ・ママコノシリヌグイ・ツリフネソウ
の咲く、駐車場には水曜日にも係わらず10台以上の車があり、人気が伺える。白毛門沢を
詰めたと思われるヘルメットとザイル姿の2人連れが、9時半と言うのにもう下山してき
た。 白毛門沢に架かる鉄橋は豪雨の爪跡で、両側のステップが削ぎ落とされて痛々しい。
川を渡るとブナの林になり、いきなり急登が始まる。瀬音のみの静けさを破るかのように、
アカゲラがドラムを叩く、「よく来たね、ガンバレヨ」なんて云われている感じである。
足元には八ヶ岳で有名なオサバグサの羊歯状の葉が綺麗である。20分程でマチガ沢が梢越
しに見える尾根に出る。今度は湯檜曽川の方から瀬音が風に乗り揚がって来る。尾根が痩
せている性だが、小さなピークがあると思ってそのポイントまで近づくと更に急登を繰り
返す。振り返ると登山指導センターの屋根が間近だ。この急登は木の根がローム質の土を
抱えた階段状であり、根を掴んでスタンスを決めての登りだ。80分程で「檜のウロ」(檜に
松が直立したもので1人位が入れるウロ)である。数分で登山道は白毛門沢側となり、東側
が開ける。大きな滝音を轟かす大滝や、白毛門の山頂が時折望める。登りも木の根から、
岩のステップへと変わりだすも、相変わらずキツイ登りだ。太陽の光を跳ね返すイワカガ
ミやイワナシの葉が登山道の両側を埋める。開花した春先の光景が想像される。茨やヒメ
モチ・ナナカマド・ガマズミの赤い実も澄んだ空気にぴったりだ。「檜のウロ」から70分
で「松ノ木沢の頭」である。ここで森林はほぼ無くなり、マチガ沢・一の倉沢・笠ガ岳・
目の前にジジ岩ババ岩の門柱を従えた白毛門と申し分の無い展望だ。足元では、10cm程
のヤマリンドウが岩に沿う様に紫の花弁を付ける。白いミヤマコゴメグサ・ウメバチソウ
も健気だ。紫の強いタテヤマウツボもビロードの花で迎えてくれる。山頂は目前に迫りル
ートもよく望めるも、岩尾根であり、一歩一歩足元を確かめて登るので時間が流れて行く
ようだ。白い穂状の集合花のイワショウブも風に吹かれて風情があり、いい物だ。
最後の鎖場を越えると、目前に数名の人が憩う山頂だ。急登の連続で辿り付くのに4時間
弱も掛かってしまった。(やはり歳を・・実感する)白毛門は巻機山から連なる巻機山岩
体に属し、その南端に当り、同岩体の笠ガ岳・朝日岳が、又湯檜曽川と対峙した谷川岩体
そして苗場山等の赤湯岩体が一の倉の右上に望める。この3岩体は石英閃緑岩を主体とし
た貫入岩体だそうである。このコースでは石英閃緑岩の石英結晶が小さいのを観ることが
出来た。谷川岳・吾妻耶山・榛名山・武尊山・燧ヶ岳・至仏山及び笠ガ岳と山頂からの
眺めは360°申し分ない。生涯忘れ得ぬ7時間の山旅が出来た気がする(H20..9.10)