仙人通信76 掃部ヶ岳(1449m)・杏ヶ岳(1292m)
 掃部(かもん)ヶ岳は、榛名山体の西側の外輪山で、榛名火山の中の最高峰である。
榛名火山は中新・鮮新世に形成され、赤城・子持と同じ那須火山帯に属し、海抜2500m級の
円錐火山であったと推測されている。その後の崩壊や噴火で4万年前に出来たカルデラが現
在の榛名湖である。有史での噴火は、榛名富士の東にある二ツ岳で6世紀に2度あったとあ
る。国民宿舎前の駐車場から掃部ヶ岳→杏(すもん)ヶ岳を縦走して、林道を戻るコースとし
た。檜林を20分程登ると、道標のある尾根に出る。硯岩まで100mとあり5分程で岩の上に
立てた。正面に榛名富士が、眼下のコバルトブルーの湖面には、白鳥の遊覧船が
水面に八の字の波を立てて、昔と変わらず高峰三枝子の「湖畔の宿」をかけて浮かぶ。
道標に戻り緩やかな登りを辿る。黄色く色付いたイタデカエデや赤く染まったオオモミジが
見られるもサクラ・リョウブ・ミズナラは既に落葉して、足元にある。分岐から30分で掃部
ヶ岳の山頂に着いた。梢越しに榛名湖が、烏帽子に似た烏帽子岳・榛名富士・アンテナの立
つ二ツ岳・相馬岳そして縦走路にある鷲岳も望めるも、ガスで霞み近くの赤城山すら見えな
い。ところで掃部ヶ岳の掃部とは、平安時代の朝廷の制度で催し事の準備や後片付を行った
部署のことだ。その役に当たった方を慕って付けられたのであろうか?・・。
膝丈の笹で覆われた踏み跡を20分程下ると、ダケカンバやブナの多い西峰に着く。山頂には、
30株ものリンドウが一面に咲いているではないか、時期的にも花への期待が無かっただけに、
ただ驚きと嬉しさで飛び上がった。山頂からは僅かなアップダウンを繰り返し耳岩に着く。
岩の上に立つと、眼下に榛名神社の立派な大屋根が緑の中に確認されたが掃部ヶ岳で湖は望
めなかった。耳岩から杖の神峠までの尾根道は、長く急な下りで、掃部ヶ岳山頂から1時間
を要した。峠のお地蔵さんと石祠には、黄色いヤクシュやタニ菊・白い野菊・ママコノシリ
ヌグイ等が風情を添えていた。峠から杏ヶ岳までの往復2時間を確認して、笹の中の踏み跡
をトレースし進んだ。最初の20分で鷲岳山頂である。獅子頭のようなトリカブトの実・小さ
なアザミ・紫の山韮が山頂の石祠に似合う。尾根では真っ赤に色付いたオオモミジが太陽の
光を受けて眩しい。峠を境に植生が変化しているようで、ヤマボウシの赤く熟れた実が足元
に目立つ、木に付いていれば御相伴できるのに残念・・。5つ程の小さなピークを40分掛け
て杏ヶ岳山頂に着く。南を向いた3体の小さな石祠には、白い野菊とリンドウが優しげで心
が和む。展望を期待していたが榛名神社の先位が今日の視界の限界であった。雄大に広がる
榛名の山を見ていると、山の生い立ちに思いが馳せる。
今回のコースでは人に会う事も無く、枯れ葉を踏む自分の足音のみの静かな山路であった。
帰路の鷲岳で一息入れていると、数羽のヒガラが手元に飛来して合唱だ。微笑ましさに嬉し
さを噛み締めた。湖に向う林道では、タニ菊・ヤクシュ・リンドウ・野菊が見頃であり、約
5時間の秋の山路でプレゼントを貰った気がして、満足し家路に着いた(H20.10.21)。