仙人通信77 高田山(1212m)・石尊山(1049m)
 高田山は地蔵岳(赤城)と岩菅山(志賀)の中間に位置し、補点としての一等三角点の
山である。四万湖の上流にある駒岩公民館の庭に駐車してのピストンである。
石材店の横からのスタートであるが、高田山を示す道標の横には、山蛭予防の為の食塩水
スプレーが準備され、蛭が多い事を教えてくれる。(この時期は心配ない筈ですが?)
小さな沢を渡ると、猿や猪から村落を守るネットと電線が張られたゲートがあり潜り進む。
秋の名残のアザミが一輪だけ、我を寂しげに向かえてくれた。登山道は杉木立の中を、山
襞を捲く様に左手方向に緩やかに伸びて行く。道端の草類も盛りを終え、山アジサイの黄
葉と杉の落ち葉のみで、蛭殿には巡り会うこともなさそうである。40分程登ると、やっと
潜れる高さの石の鳥居である(祭られている神は不明)。山の肩に青空が僅か覗いて見え、
杉林からの脱出も近い。朴の大きな葉・桜・小楢・椚の落ち葉の絨毯へと変わり、更に進
と、青空を真っ赤に染めた山モミジの林である。鳥居から10分程で微かに水が滴る獅子井
戸を示す標示に着く。九十九折れの道は、右手へと変わる。足元の枯れ葉を踏む小生の足
音と腰に付けたカーウベルの音のみで、立ち止まると音の無い世界だ。(静かさに怖くなる)
日の光を受けたモミジが舞い散る風情は、静かに雪が降るかの如くで、足元に舞って地面
を赤く染める。別世界を一人佇む境地である。ゲートを潜って1時間程で尾根に着く。朽
ちた道標は左手方向を指す。紅葉に燃えた四万川沿いの山間に村落が見え隠れし、小春日
和で長閑な佇まいである。35分程で大きな岩の山頂の石尊山である。小さな躑躅も赤い葉
を着けて迎えてくれる。雲一つ無い360°の展望は文句の付けようが無い。浅間・榛名・足
尾・赤城・武尊・三国・岩菅そして高田山だ。石祠の前から、高田山までは幅1m程の痩
せ尾根で、木の根と岩をスタンスにしてのUP-DOWNの繰り返しである。(ロープもあり
危険はないようだ)山の岩体であるがポーラスで密度の低い複輝石安山岩で、グリーンタ
フの上に出来た中新世後期の陸成堆積物で四万川を挟んで分布する高田山層と呼ばれ、高
田山周囲のみに分布するそうだ。40分程の格闘でススキに覆われた一等三角点の山頂に立
てた。三角点の石の前に地図とコンパスを置いて周囲の山の確認である。落葉した梢越し
ではあるが、榛名方面以外は展望が利く。一等三角点の山である袈裟丸山・地蔵岳・子持
山・少し北側の武尊山・志賀の岩菅山の5山が両手を横に広げた中に見えるのが嬉しくて、
地図を股いて両手を広げて万歳である。最近登った草津の白根・八間山・稲包・平標・尼
の禿山・前武山・皇海・袈裟丸・子持の記憶が頭を過ぎる。寝転んで空を見上げると絹雲
が静かに、北風に煽られて漂う。2日後は雨かな〜なんて考え、至福の時を送る。時折小鳥
の囀る声がするが形は見えない。山頂にあるポストにノートがポリ袋に包まれてあり、登
った人の感想が書き込まれていた。誰にも会うことの無い5時間弱の山旅の最後に数羽の
山鳥が民家近くで姿を見せ、小首を下げて見送ってくれた。長閑けきかな!この山路・・・
                             (H20.11.13)