仙人通信79 万三郎岳(1405m) 万次郎岳(1300m)
 万三郎岳(一等三角点)と万二郎岳は伊豆天城山を代表する40万年前の火山である。
天城高原ゴルフ場の手前のハイキング専用駐車場から両山を登る4時間半のコースとした。
道路を挟んで縦走路の標識が登山口だ。ゴルフ場北側の斜面の緩やかな登りで、ゴルフ場
側にブナやヒメシャラの潅木と植林された檜・杉との境界に登山道は設けられている。
この時期は潅木の間から太陽が差し込み、明るいコースであるが遠望は利かない。
昨日霙が舞ったのであろう、0.5mm程のコンペイトウのような尖った白い結晶が登山道を
白く覆い、踏み跡のない真白なバージンロードを歩くようで気が引ける。5分も歩かない
のにブナや、艶やかな肌色のヒメシャラの巨木が林立し、風も無く静かで深山に居る錯覚
を起す。15分で万二郎と涸沢方面の分岐点に着き涸沢方面に進んだ。潅木の下ではヒメモ
チが5mm程の赤い実を付け、差し込む日の光に輝く。アセビも多く、もう蕾を付けて春を
待っている。太陽の光が余り入らない為であろう、シノブゴケ・スギゴケ・オキナゴケ・
ハイゴケ・オオシラガゴケが元気だ。鱗の字で苔ではない。私はシノブゴケが好きだ。
足元の岩を霙が覆い滑る。足元を確保しながら1時間程で涸沢らしき沢に着く。沢の小石
を割ると小さな石英の結晶が日の光でチカチカと光る。天城山体は湯ヶ島層群の上に出来
た密度の低い「しそ輝石安山岩」で草津本白根の山体と同じ岩石の成層火山である。
涸沢を渡り10分程の急な階段を登ると涸沢分岐点に着く。杉・檜の枝葉で遠望は利かなか
った状態からの脱出だ。木柱を2段に積んだ急な階段の登りとなる。植生もシャクナゲや
ツツジも混じり出す。ヒヨドリ・コゲラ・ヤマガラが囀り長閑である。50分程で山頂と
八丁池との分岐で尾根道となる。眼下にはカルデラ上に出来た伊豆ハイランドが、又海に
面して稲取や河津の町も望める。日の光が雲の間から漏れてこれらの町を照らし神秘的光
景を醸し出す。400mで万三郎の山頂に着く。シャクナゲ等の木々で視界は良くない。富士
山を探していると万二郎から登ってこられた方が指差して教えてくれた。小生が考えてい
た位置より左手だ。伊豆の他の山脈はスカイラインに沿って南北なのに対して、天城は
カルデラを包み東西の山脈であることを実感した。富士山は上下に雲を抱えて梢の間から
望める。明日は雨模様とのこと満足せねば・。シャクナゲの林を30分下ると鞍部である
「はなたて」だ。「石楠立」と書く、なんと粋な計らいか。深さ1m程の掘割をアセビが
トンネル状に覆う緩やかな登りとなり、ピークの馬の背に着く。ゴルフ場と万二郎の間の
沢(菅引沢)の上部は激しい土砂崩落を起しているのが見える。石楠立から30分で万二郎岳
山頂である。ここからは先程のカルデラの様子が手にとる様である。遠笠山を見ながら沢
沿いを40分程で分岐した地点に戻った。スカイラインの途中にある巣雲山に登ってみた。
南に天城・大室山・そしてこの巣雲山の宇佐美・多賀・湯河原・箱根・達磨山らの伊豆火
山群や、富士山・愛鷹山を一望し満足の行く山旅の締めくくりが出来た。(h21.1.7)