第52回国民体育大会 なみはや国体 山岳競技報告書(栃木県選手団)より

報告書が完成しました。すでに山行報告にもありますが、1997年なみはや国体に
栃木県代表として矢板岳友会から有澤さんが参加しました。これはその報告書から
の転載です。

(注意:文字認識ソフトを使用しているため、一部の記号が実際のものと異なります。
 また、挿入されている絵文字はカットしてあります。)


夏季合宿
金剛山頂にて
縦走競技のゴール地点にて 踏査競技のゴール後

表彰式後、少年、少女、
成年男女チーム全員で
開会式後
大阪府太子町の宿舎前にて

             

大 阪 国 体



                            成年女子  有澤 朱美
 プツンッ!と緊張の糸が切れた気がする.

 初冬の荒涼とした風景が,寂寥感を増させる.

 壁に立て掛けてある賞状がふと視野に入ると,あの日の思い出が脳裏に蘇る.

 もう遠い日の出来事のように思われる.

 今年も何の間違いか参加するはめになってしまった.

 「一度やったらやめられないよ」と言われていたジンクスは,正にその通りであった.

 ■関東ブロック予選−奥多摩

 5月末より合宿開始.予選通過2チームということで,厳しい展開が予想されていた.

 各人のスケジュール調整が取りにくく,成果もなかなか上がらず,合宿毎に苛立ちと不

安が募っていった.

 「予選落ち=夏山合宿+沢登り」の公式が日々色濃くなっていくのを感じていた--この

辺は複雑な心境--.

 半ば祈るような気持ちでのぞんだ関ブロ当日.本国体への切符がかかっているだけに,

その重圧感は計り知れない.--目の前にどんないい男がいても,ここまでドキドキ.ソワ

ソワすることはないだろう.

 競技は若い二人のパワーに後押しされ,無事(負傷者あったが)予選を通過する運びと

なった.とりあえず,めでたしめでたし.


 ■大阪国体

 予選通過でホッとしたのも束の間で,また合宿とトレーニングの日々が再開した.縦走

競技の重量負荷,登攣親技でのオンサイト方式,踏査競技での地図の作成,持久力など大

阪での実地をふまえ,傾向と対策が練られた.監督・コーチ陣の指導に基づき.効率的な

練習が行われた.

 スケジュール調整のいかない分は,模擬コースとして鳴虫山(日光)を走ったり,今ス

ポでのクライミングコンペ等が良い修行の場となった.

 重さ慣れとして,重量負荷状態でのランニング,踏査ポイント暗記用に単語帳を使用し

たり,登挙コーチとして--モデル:若林さん.撮影・監修:片柳さん--のビデオテープが

心のよりどころとなった.

 関西のむっとするような猛暑の中で始まった練習も,回数をこなすうちに涼くなり,朝

晩は寒ささえ感じるようになっていた.

 気候は涼しくなっても,おいしいビ○ルを味わうために!を目標に練習意欲を高めた.

 ちなみに私が感じた一番おいしかったビ○ルは,本国後の成年女子で行った後夜祭のビ

○ルではなく,合宿最後に寄った難波での打ち上げのビ○ルである.バス待ちの一時では

あったが,その日は好タイムを記録し本国体へ何とか見通しが付いたという安堵感,また

本国体での健闘をお互いに確認し,意識が一つになったと感じた真重な夜であったからで

ある.

 本国体開始.初日は登攀.他種目と異なり,6分と短時間での勝負である.

 オブザベーション(所見)から異様な緊迫感が走る.登攀は奥が深い(不快?)と常に

思う.毎回,大きな後悔,課題が終了後に残る.今回も入賞はしたもののフォーム,バラ

ンス等の配慮の無さ, 「あと1ホールド上へ」と悔いは残った.明日への気分展開を図

ろうとしてもなかなか打ち消せるものではなかった.

 次日は縦走.前日の晴れない心持ちのままで,やや神経質気味.足は上がるかとか.最

後までバテないかなど心配事は後を尽きない.

 スタート.心配を余所に体にいつも通りの調子を感じた.三人一群となって進んでいけ

た(といってもようやく二人についていられた感じ)ので,心地好い緊張感を保ったまま

ゴールできた.タイムは予想以上の出来.疲労感はあったが,心は晴々していた.

 疲れた体を癒すために温泉に出掛け,再び明日に備えての競技人となった.

 最終日は踏査.上位入賞を目指して前夜より綿密な作戦が練られていたが,私はとにか

く頑張るだけと,作戦等に関してはリーダー委任である.

 1時間46分40秒.渡辺さんは.地図の合致しない箇所でのポイント記載や三人の状態の

把握,私は調子今一つで重量調整と自分の力量の比較.玉野さんは負傷しながらもそれを

おしのけて,と三人が三様の思い悩みを秘めて走り抜いた.ゴール後には,得点より何よ

りも「終わった」という安らぎ感で満たされていた.しかし,後方でのざわめきと興奮状

態の監督によってそれは一転して歓喜に変わった.得点板に記載された80点満点の文字.

理想ではあったがまさか現実となって表れるとは.ドラマチックな終焉であった.

 以上.今年は総合三位という成績をもって,幕が下ろされた.


 今大会において,合宿・競技期間中ともに励まし合った成年男子,少年少女監督・選手

のみなさん.明るい笑顔を振りまいて応援してくれた神山さん,河野さん,江連さん.役

職の中応援に駆けつけて下った佐久間さん,若林さんをはじめ今スポでクライミング指導

助言を下さった皆さん,夜分訪問し,御馳走とお布団を提供碩いた片柳夫人.陰ながら声

援を送って頂いていた矢板岳友会の皆様--印南さんの現地応援で支えられました--.職場

の皆様にもご迷惑をおかけしました.

 多くの方の御支援・御協力は忘れられない宝物となりました.感謝致します.


 今年の成女は,自杯おにいさん(毛塚)がいて,お姉ちゃん(渡辺)がいて,こども(

玉野)がいて,おやじ(片柳)がいて,おかあさん(有澤)がいて,家族的な温かい雰囲

気がありました.このようなアットホームな中で競技してこられたことが,何よりも幸せ

だったと思います.また家族で集合して団欒できることを心待ちにしています.