2000/8/2〜6   雲の平

水上(撮影)

秩父沢 弓折岳付近 巻き道分岐 双六岳山頂 双六岳から
笠が岳 三俣蓮華 黒部五郎岳 雲の平遠望 鷲羽岳山頂
水晶岳 高天原と薬師岳 吉野入浴 高天原温泉 三俣山荘から
三俣山荘からの
鷲羽岳
巻き道の影
 8月2日(水)

 静岡を午前中に出て、国道52号、20号を経由して登山基地である松本近郊の飛島宅へ集合。天
気は不安定で、北アルプスや美ヶ原は、ガスが覆っている。そんな中、美ヶ原の山腹のガスが夕日に
照らされて、虹のような七色の彩雲が縦に伸びていた。
 小林さん、吉野さん、印南さんら栃木からやってくるメンバーも不安定な天候の影響により何回か
電車が止まってしまったらしく、午後7時半になってやっと松本駅に到着。ジャスコで食料を調達し
てその日は、飛島宅泊。

 8月3日(木)

 飛島宅を4時半に出発して、一路、登山口の新穂高の無料村営駐車場へ。駐車場は、8分の入りだ
った。駐車場上部に車を停めて、5時30分に出発。天気はよく、青空が広がっていた。新穂高バス
ターミナルを過ぎて、左俣林道に入る。左手に穴毛沢の治山工事現場を見ながら進む。大崩壊が続い
ている景色を見ると、ここが普通の山でないことに気がつく。普通に林道を歩いていてもここは北ア
ルプス。やっぱり違うものだ。

 妙に速いペースで歩き続けてワサビ平の小屋着。ここまで1時間10分ほど。少し小屋で休んでか
ら歩き始める。しばらく行って、左俣林道から離れて登山道の川原に下りる。昨年来た時とはとは2
週間ほどのズレがあるが、まだ大きな雪渓が残っていた。また、倒木・流木がひどく、道がかなり荒
れている。今年は、雪が多かったためか、雪崩で荒れてしまったよう。確か、昨年、この辺はちょっ
とした湿原のようになっていたと記憶していたんだけど・・・。

 石畳の整備された道は、昨年のとおり。歩きやすい道だが、朝は、後からに日が当たって暑い。昨
日、大量に買いこんだ食料が肩に重い。いつもながら、山での食料にはいろいろ悩んでしまう。今回
は、小屋泊まりでで夕食のみ頼む予定なのでたいした量にはならないはずだけど、お菓子類を買いこ
みすぎたのか、初日で体が慣れていないせいか、なかなか調子が乗らない。上流に雪渓を抱えた秩父
沢で小休止。後を振り向くと、穂高連峰がシルエットになって延びている。とにかく暑くて水ばかり
飲んでいた。

 途中、小林さんが遅れ始めたので、ペースを落としてゆっくり登る。イタドリヶ原、シシウドヶ原
と進む。たくさんの人達が休憩している。この時期ならば、お盆休みの前でもあることから、ガラガ
ラかという期待が少しづつ崩れていく。皆考えることは同じのようだ。ここからは、昨年の記憶では
水平に回りこんで鏡平の小屋に着くと思いこんでいたが、結構な登り。皆に「鏡平の小屋にはかき氷
があるから」と、声をかけてひたすら登った。この途中でも、残雪発見。ここではまだまだ雪解けが
始まったばかりという感じで、ぜんまいのような新芽が出始めているだけだった。

 ゆっくり登っていくという小林さんを残して鏡平へ。だんだんと木々が少なくなって、空が明るく
なっていく道を進むと、パッと開けたところに木道の延びた池があり、回りこむと小屋があった。小
屋前は、昨年と違い、デッキ風に板が張ってあった。昨年は、雨でグチャグチャになっていて、ベン
チで休むのも大変だったけれど、今回は、天気もよく、デッキのせいですこぶる快適。小屋を見ると、
噂のかき氷やジュースが飛ぶように売れている。吉野さんはビールに目がいっていたようだが、生ビ
ールが750円では少し手が出ないようだ。で、500円のメロン味のかき氷。そして、ここでお昼。
印南さんは大量に買いこんだバナナが重いらしく、さっそく胃の中にしまい始めた。小林さんは、小
屋のラーメン。実は、このときから、小林さんの「北アルプス・ラーメングルメ」が始まったのだった。
このときは本人も自覚していなかったようだが、ここから各小屋でのラーメンの比較が始まることと
なる。そんな中、飛島さんはカロリーメイト。今回の行動食は、カロリーメイト中心にするというこ
とだった。

 ここからは、小林さんが先頭で歩く。少し休んだせいで、調子よく進んだ。弓折岳稜線までの道は、
次第に高山植物も増えて楽しい。稜線に出ると、待望の展望。槍、穂高、そして笠が岳。それに、さ
まざまの高山植物と残雪。典型的な夏山景色で、心も弾む。途中、匂いが臭いというクロユリのにお
いを嗅いだ。う〜ん、確かに臭い。道は稜線を左俣側から双六谷側に乗り越すと、双六岳が大きく見
える。また、双六小屋の向こうには鷲羽岳の姿も。昨年は雨でなにも見えなかった景色が青空のもと
に見えている。昨年の帰路、悔しくて何度も何度も振り返った景色がガスや雨で隠されることもなく、
はっきりと見えている。

 思えば、今回の雲の平行きもこの時から計画していたようなものだった。あの時、三俣蓮華岳から
雲の平を望んでいたら、すぐ次の年に行こうとは思わなかったと思う。行けなかった、見えなかった
という思いが強かったからこそ、今回の雲の平行きが実現したのだと思うと、昨年の山行もまんざら
無駄ではなかったといまさらながら思う。

 今日の日程は双六小屋まで。ここでは、テントの吉野、飛島両氏と分かれて、小林、印南、水上は
小屋泊。テント場には、20日からの高校総体山岳競技に出る各県の高校生達が合宿をしていた。ま
た、テント泊をしない高校生達も小屋に泊まっていて、小屋は大混雑。そういえば、昨年も、中学生
の集団登山に当たってしまって、どうもうまく行かない。それでも、布団一つに二人というはずだっ
たけれど、一人分空いていたため、結構余裕で泊まることができた。夕方には結構な夕立があったり
して、テントも大変だったように思う。夕食は、昨年同様よかった。メニューは、てんぷら5品、鳥
のささみ等、「山の中でこんなにいいもの食えていいんかな。」と思うほどの質だった。

 8月4日(金)

 今日の予定は、高天原山荘まで。朝、5時出発。今日もゆっくりと登る。小屋から、双六岳の頂上
台地まで登る。途中でご来光を仰ぐ。天気は上々。昨年のガスと雨が嘘のようだ。後から樅沢岳に隠
れていた槍ヶ岳が姿を見せてくる。北アルプスの絶景だ。頂上台地は、平坦な砂礫地帯。どこが本当
の頂上か分からないほどの山頂だ。山頂からは、今まで隠れていた黒部五郎岳が大きなカールを見せ
ている。これが昨年見たかった景色なんだ。槍、穂高側の荒々しい景色に対して、たおやかなゆった
りした景色。同じ北アルプスなのにこうも違うもなのだろうか。

 三俣蓮華岳へは、稜線の道。気持ちのよい稜線がまっすぐに続いている。誰かが「まるで、東北の
朝日を歩いているようだ。」という。確かに、北アルプスは岩稜歩きのイメージが強いが、ここはそ
うで
はない。大きな景色の中をゆっくりと歩くのがお似合いの稜線漫歩。2週間前に登った鹿島槍ヶ岳と
違って空を切り裂くイワツバメは飛ばず、蝶やホシガラスが飛んでいた。三俣蓮華岳からは雲の平が
一望でき、雲の平山荘の赤く小さな屋根が見えた。ずっと遠くに見える小屋は、太郎平の小屋だろう
か?

 山頂から降り立った三俣山荘は、水が豊富な小屋だった。ここで大休止をしてアイスコーヒーを作
った。また、きれいに掃除されたトイレを借りて、お礼に山小屋撤去反対の署名をする。山小屋撤去
反対については聞いたことはあったが、ここのこととは知らなかった。

 今日は、これから鷲羽岳を越えて水晶岳まで行き高天原山荘へ降りる予定だったが、ここまでに時
間がかかりすぎてしまったため、水晶岳には行かず、鷲羽岳経由で雲の平へ行くこととする。ここで、
直接黒部源流に下りて雲の平に向かう小林さんと分かれて鷲羽岳へ。事前に聞いていた「ザクザクし
た歩きにくい道」という印象はなく約1時間で山頂。景色はいいのだが、この辺りから雲行きが怪し
くなってきた。午後は雨になるかもしれない。そんな思いで、大して休まずに岩苔乗越へ。ここから
雲の平へは祖父岳を越えなければならず、雷の不安があって、自然と足は急ぐ。双六同様の平らな祖
父岳を越えた辺りで簡単な昼食を取ろうと思ったが、小屋まで行くこととする。そんな中、暗くなる
空の下で悠然とラーメンを作っている人がいたが、自分には真似はできなかった。

 大きな岩が積み重なった祖父岳からの下り道の途中、雨がぱらぱらと降ってきた。小屋まではもう
少し。歩きづらいテント場付近の道を進み、丘を越えて山荘へ続く木道に出た。雷が鳴り出していた。
周りの景色を楽しむ余裕もあまりなく、とにかく小屋へ。流水や池、庭園のような岩の間を木道が続
いている。そしてその木道は、少し小高い場所に立つ小屋へとまっすぐに延びていた。小屋に着いて
後を振り向くと、歩いてきた鷲羽岳や水晶岳方面は、真っ黒な雲に覆われていて、その姿がよく見え
ない。遠くでゴロゴロと雷が鳴っていた。

 小屋では、小林さんが待っていた。ここでも、昼飯に小屋のラーメンを食べたそうだ。その話しを
聞いたら無性にラーメンが食べたくなって、小屋前のベンチで印南さんと持ってきたラーメンを調理
してラーメン&ビール。しばらくすると、吉野さん、飛島さんが遅れてやってきた。今日は、小屋泊
まりにするという。雲の平のテント場は、小屋から20分ほど離れていてビールを買いに来るのが大
変なのが理由なのか、彼らが言っていたようにテント場が水浸しだったからかはよく分からないが、
皆一緒というのは楽しいものだ。一段落して、小屋2階のバルコニーに場所を移して景色を楽しむ。
本来の予定では、雲の平散策の時間なのだが、依然、雷が鳴り続けていたりぱらぱらと雨が降ってく
る状況では、歩き回ることもできない。しばらくすると、雷と雨が小屋付近までやってきて、かなり
の大雨になった。雨はかなり長く続いて、外に出られない人達で小屋も満員。それでも、夕方には少
し小ぶりになって、水晶岳方面から三俣蓮華方面に向けて大きな二重の虹がかかった。

 雲の平山荘の造りは、2階が大部屋となった昔ながらの小屋だった。その造りが妙に新鮮で、同じ
ことを感じている人がいるらしく、しきりと写真を撮っている。水は、飲み水に適したものがないせ
いか、雨水を沸騰させて使っていた。小屋周辺には流水等もあり水は豊富に見えたが、なかなかそう
はいかないらしい。私たちも、沸騰させた水を冷まして、ペットボトルに入れて使用した。

 8月5日(土)

 今回の夏山も後半戦に入った。今日は、高天原経由で三俣山荘まで。高天原は、印南さんの強い希
望だった。なんでも、森村誠一の「青春の源流」という小説を読んでから、ぜひ行きたいと思っていた
場所らしい。その本を読んでいない自分にとっては、今日のコースが「下って登ってまた下って登る」
というのが少しかったるい。山荘からは、隣の丘に上っていく。岩がゴロゴロして、その間を水が流
れている歩きにくい道だった。昨晩の雨がなかったらここまで歩きづらいということなかったのだろ
うが。丘を越えると、もう一つの丘。その上に、なにかアンテナのようなものが立っている。携帯電
話用かとも思ったが、こんな場所に作る意味もなくいったん沢に下りてまた登ると、電力会社の雨量
観測所だった。ここからはしばらく比較的平らな道を進むが、依然とグチャグチャの道。高天原峠ま
ではこんな感じだった。そしてここからが今日のハイライトその1。下る下る。木の根をつかんでは
しごを降りて、こんなに下りて大丈夫?といいたくなるほど下りたところが岩苔小沢。ここで朝食。
すっかり汗びっしょりになってしまったが、まあ、これから風呂に入るんだからまあいっか。

 高天原はここから平らな道を10分ほど。沢からしばらく行くと、ニッコウキスゲが咲く湿地にな
って、なおも行くと、薬師岳をバックに広々とした湿原が開けた。ここが高天原。想像よりも広くて
明るい場所だった。とりあえず、高天原山荘、そして温泉へ。山荘は、これまた昔ながらの小屋で、
趣があった。同じ北アルプスで何百人も収容する小屋がある中で50人程度の収容のこの小屋は、ど
こか、昔の北アルプスを残しているみたいで少しうれしかった。

 さて、小原庄助さんを気取って朝風呂へ。小屋から10分程度下っていく。途中、なぜかザックを
しょっていることに気づき、お風呂セットと着替えだけを持って再び下りていった。風呂は、下りた
沢の対岸にあった。ちゃんと男女別で女性用は小屋掛けもしてある。湯は、白濁していて、熱くもな
くぬるくもなくちょうどよい湯加減だった。ただ、長湯をしてしまうと疲れてしまうので、汗を流し
た程度で出なければならなかったのは残念だった。

 その後、高天原山荘でまたまた食事をして、豊富な水でアイスコーヒー。ここでもトイレを借りた
が、総じてこの山域の小屋では、掃除が徹底している。となると、汚くなるのは登山者のせいか。
う〜む、今度からは心して使おう。

 小屋を後にして、岩苔乗越へ。ここからが今日の第2のハイライト。大した傾斜でもないのだが、
風の通らない樹林帯の登りは暑くて暑くて、ただひたすら水を飲む。前日、岩苔乗越から見下ろした
この道は、雪渓沿いの涼しげな道だったのだが、こんな下にまで雪渓が続いているはずもなく、そん
なことも想像できなかった自分にイラつきながらもひたすら2時間。なんのために風呂に入ったのだ
か分からなくなるくらい汗をかいた。途中、水晶池もあったらしいが、道標を見ただけで行く気も起
こらなかった。そして、やっと雪渓付近まで登ってくると、なにやらまた怪しげな雲行き。お花畑は
きれいで、風もあり気持ちがいいが、雲の量が増えている。出がけに、小屋の人が「午後は雨ですね」
といった言葉が思い出される。ただの雨ならいいけれど、ここでは雷雨を意味していることを考える
とあまりゆっくりもしていられない。とにかく、雷が来るまでに岩苔乗越を越えておかないと気持ち
が悪いので、雪渓沿いの道をひたすら登る。そして、かなり登ったところで後を振り返ると、「あれ、
飛島じゃねえか?」という吉野さんの声。今日、5時に歩き出したのは、吉野、印南、水上の三人。
直接三俣山荘に戻る小林さん。飛島さんは高天原には行かないといって寝ていたのに・・・。よぉく、
見るとやはり飛島さん。黄緑色のザックにテントの黄色いポール。なんだかよく分からないけど、と
りあえず乗越で待つことにした。

 飛島さんは気が変わったらしく、7時に出発。高天原を経由して追いついたということだった。こ
こからは、下り。途中、黒部側源流の水でアイスコーヒーを作った。グルメの小林さんの口に合うか
どうか分からないが、とりあえず持っていくことに。しばらくすると、ぱらぱらと雨が降ってきて、
それとともに雷。小屋の人は午後に雨といっていたが、12時過ぎてすぐに雷雨となった。午後とい
うのを2時頃と解釈していた自分たちにはちょっと早すぎた雷雨だったが、これは、夏山の天気その
もの。本降りになりそうだったので、大急ぎで雨具上下を着た。そして、三俣山荘への登り分岐に着
く前にはかなりの雨となってしまった。ザーザー降る雨とゴロゴロとなる雷。多分落雷はないだろう
とは思っても、気持ちのよいものではない。なんせ、昨日の雷雨では、稲妻が真横に走ったのを見て
しまったから。そんな中、岩苔乗越に上っていく老人とすれちがった。雷の中、稜線とまでいかなく
ても草木のない乗越に登っていく姿に少しばかり危険な感じがしたのは、自分だけか。安全な場所で
少し待ったほうが良くないか。少し考えてしまった。

 三俣山荘では、雲の平から直接向かった小林さんが宿泊手続きを終えて待っていた。そのため、自
分たちはすんなりと小屋に入ることができた。しかし、多くの人は、宿泊手続きが終わるまで雨の降
る中外で待っていて、大変だったようだ。ここでも、テント組みのはずの吉野、飛島両氏もあまりの
雨でテントをあきらめて小屋泊まりへ。そして、小屋で昼食。自炊場は、乾燥室の手前にあり、そこ
で雑炊を作った。水は豊富にあるため、なんでも作れそうだ。ただ、この後、乾燥室にタオルなどを
干しに行った時、入ってすぐに干してあった男物のトランクスに顔をべったりつけてしまい・・・。

 食後、しばらくして、「展望レストラン」でコーヒーを飲みに行く。小林さんのおごりでサイフォン
による本格コーヒーを飲んだ。この辺り、やっぱり北アルプスだなぁ。次第に弱くなっていく雨を眺
めながら、小屋主が書いた「黒部の山賊」と「本当に山小屋はいらないのか。」(本の題名、あって
ますか?)の二冊をパラパラと読む。昔も今も山は雄大だけど、そこに人間が絡むといろいろなこと
が起こるんだなぁと考えてしまう二冊だった。(なお、この二冊は、印南さんが「印南文庫」に所蔵
するべく著者(伊藤正一氏)のサイン入りで購入しました。)

 そして、雨が上がった。食後、小屋の前に出て景色を見ていると、正面に槍ヶ岳から穂高に連なる
尾根がシルエットで浮かんでいる。北鎌尾根もしっかり見える。そこに、夕日が当たって、虹が出た。
大きな虹だった。今回の山行は、初めから虹がついてまわる、不思議な山行だ。

 小屋の混雑具合は、昨日と変わらず。それでも、本来4人で寝るところを3人でOKとなって、す
こぶる快適。布団が多すぎたから何枚かを敷いて寝ると、フカフカのベットで寝ているようだった。

 8月6日(日)

 気がつくと最終日。もう、山を降りる日になってしまった。朝、5時に小屋を出発。帰りは、三俣
蓮華、双六へは登らず、巻き道を行く。朝日が三俣蓮華に当たって、思ったよりも大きく見えた。巻
き道も花の道。いろいろな高山植物が咲いている。また、残雪も残っていて、夏山最盛期といった風
情だ。双六小屋には7時に到着。ここで朝食をとった。小屋は、すでに大半の登山客を送り出した後
で、小屋前のベンチもすいていた。小林さんのラーメングルメでここでも朝からラーメンを食べるは
ずだったが、「しこみに30分かかる」といわれ、泣く泣くあきらめた。このため、次のラーメンは、
ワサビ平小屋での昼食に決定。そうなると下りも早い。僕らは、最後の景色を楽しみながらゆっくり
と下りたかったのだが、トップの小林さんはものすごいスピードで降りていく。途中、クロユリの撮
影や弓折岳への寄り道もしたが、鏡平の小屋まであっという間だった。で、弓折岳からの眺めは、北
アルプス最深部の最後の景色だった。比較的良い天気に恵まれて、また、今日も笠ヶ岳が大きい。あ
っという間に着いてしまいそうだ。笠ヶ岳まで行ってみたいという提案もして見たが、吉野さんにあ
えなく却下されてしまった。未練を残しながらも鏡平に。

 しかし、この頃からまたまた雲行きが怪しい。まだ午前中だというのに、秩父沢についたときには
笠ヶ岳稜線はガスの中となってしまった。初日から見ると、次第に天気が悪くなっていく時間が早く
なっていくようだ。天気が良ければもう一泊ということにもなっていたのに、しかたがない。なんと
かワサビ平につく頃までは天気はもってくれた。小林さんは、「北アルプスラーメングルメ」のトリ
を飾るべく小屋のラーメンを、印南さんはカレーライス、吉野さんと自分は、残り物の食料で昼食を
取り、遅れてくる飛島さんを待っていると、またまた雷雨。小屋の軒先で雨宿りをして、待っている
とすっかりぬれてしまった飛島さんがやってきた。後は、駐車場まで林道を歩くだけ。雨の中を4日
間の出来事を思い返しながらゆっくりと新穂高の駐車場に向かって歩いた。

 今回も、もっともっと見たかった雲の平、やっぱり登ってみたかった水晶岳、ゆっくり温泉につか
りたかった高天原といろいろ、さまざまな思いが残ってしまった。しかし、これでよかったと思う。
また来ればいい。昨年もそうだったんだ。今年は、昨年と違い、何度も何度も未練を残して振り返る
ようなことはなかった。今度はいつ来れるか分からないけれど、またいつかゆっくり回ればいい。そ
う思える自分に「また、少し大人になったなぁ。」と感心してしまった。(あきらめが良くなっただ
け?)

 さて、その後、新穂高で風呂に入って松本に向かう。今夜も、初日同様、飛島宅泊。明日は乗鞍岳
によってそれぞれ栃木と静岡に帰る。途中、松本近郊で夕食を取った後、店から出ると美ヶ原の方角
にまたまた大きな虹が出ていた。