2002/12/13〜15  ロッキーでのアイスクライミング講習

Cline River Galley 遠景 Cline River Galley
(Pure Energy) 20m
Cline River Galley左側 (Energy)
Two O’clock Falls 15m、
トップロープ準備中のジェイ
 Two O’clock Falls
 を登る尾上
Nordegg, Alberta, Canada
Cline River Gallery 20m (Pure Energy), grade 4 (WI IV)
Two O’clock Falls 15m, grade 3 (WI III)

 アウトドアクラブのアイスクライミングツアーに参加することになった。申し込んだ時は「申し込み
殺到であっという間に定員になったので今回は諦めてもらいますが、次の1月のツアーでは優先的に参
加を認めます」という返事が来たのだけど、「ありがとう、でも残念ながら1月にはエドモントンにい
ないのでそれにはおよびません」と礼儀のつもりで返信すると、思いがけなく情状酌量の上キャンセル
待ちリストのトップに置いてもらい、めでたく(?)キャンセルが出たので参加できることになったの
だ。さすが親切・おおらかカナダ人!
 学内のアウトドアセンターでブーツとアイゼンを借り、金曜の夕方、大学で待ち合わせて出発。私た
ちの車の持ち主で運転手のナタリー、フレッド、それにニコライ。フレッドが2月から日本でジオスの
先生をすると聞き、赴任地を尋ねるとなんと名張だという。私の家からそんなに遠くないし友達が1人
名張の高校で英語の先生をしているよと話すと、おお、と盛り上がった。3時間のドライブでロッキー
にあるNordeggのアウトドア教育センターに着く。先に着いていたメンバーにスカイダイブで一緒だ
ったペニーを見つけ、喜ぶ。スカイダイブの時同様、ドイツからの交換留学生グレッグ、フィンランド
からのミーヤ、ポーランド系移民のニコライと国際色豊かなパーティになる。アルバータ大の特色なの
か、カナダの多民族国家政策のなせる技か、様々な国籍・バックグラウンドを持つ人と会えるのも、カ
ナダに来てよかったと思うことのひとつだ。
 土曜日の朝、朝食をとり、ヘルメットを配られて出発。まず20分のドライブ、そこからまた20分
ほど山道を歩いて滝にたどり着く。たとえ20分でも半年以上ぶりに山道を歩けるのがうれしくて、思
わず幸せな気分になる。今年の異常な少雪のせいで車道も山道もほとんど雪がない。ただし河原の石の
上にはよく見なければわからないほどうっすらと、でもこれ以上はないほどなめらかに凍った氷が危険
な雰囲気をたたえている。日本だったら絶対私が転ぶのを期待されそうなシチュエーションだなぁと思
いつつ、ゆっくり歩いてなんとか転ばずにすんだ。
目的地の20mの滝にはすでに二人連れのパーティが登り始めていた。昨夜尋ねた時に、気温はたぶ
んマイナス10度くらいだと思うよと言われていたのだけど、思ったより暖かい。2年前の岳連の講習
で松木に行ったときの方がよほど寒かった気がする。冬山用のウェアを持っていないので心配していた
けど、これなら大丈夫だ。みんながハーネスやアイゼンをつけて準備している間に、インストラクター
のロビンとジェイがフリーでさくさくと登り、トップロープを張ってくれた。完全な初心者がほとんど
なので、まずはギアの装着状況確認と簡単な講義。ビレイも初めてという人が多く一通り簡単に教わっ
たのだけど、ビレイヤーがいっぱいにロープを引いたときのかけ声、日本では「いっぱい」にあたる言
葉を、“That’s me!” というのを新しく知って印象的だった。何も知識がないと、こういうささいな
ことを知るのがうれしくて一人で少し上機嫌(遠征に行ったことのある方ならとっくにご存じかとは思
いますが…)。最初はナタリーが登ることになり、私がビレイする。暖かいせいかロープがかなり濡れ
ていて、ビレイが終わると先週あわてて買ったばかりの安物防水グローブと2年ものの防水していない
ズボンの膝あたりが水浸しになってしまった。
何人かの仲間が登った後、さあ登ろうとしたら、ペニーやニコライに“Tokoは経験者(と言っても
岳連の講習一回だけなんだけど…)だからきっとうまいはずよ”と言われ、少し緊張。ここでとっさに
“そんなことないよー”と言う英語力のない自分が恨めしい。ともかく2年前習った中で唯一覚えてい
る、上半身は氷から離して、というのをできるだけ意識しながら登る。最初は調子がつかめなくて1m
位登ったところで滑り落ち、テンションをかけてしまったけれど、その後は結構調子よく登ることがで
きた。“Good job!” “さすがだね”と言ってもらい、単純だけどうれしい。みんなは2,3本ずつ登
っていたけど、私はビレイと休憩のタイミングが悪く(要領が悪いとも言う)、一本登っただけで一日
目が終わってしまった。
2日目は30分のドライブのあと、とてもきれいな景色の中をやはり30分ほど歩いて15mのTwo 
O’clock滝へ。薄曇りだけど暖かくていい日だった。ジェイが滝の右、中央、左と3本のロープを張っ
てくれ、それぞれ張り切って登り出す。真ん中のルートは氷が細くて難しそう。しかも登るそばからみ
んなが元気よく氷を破壊していくので後になるほど大変になりそうで、あわてて登る。でも、登ってみ
ると見ているよりずっと面白かった。滝上に出て見下ろす景色もロッキーらしい、これ以上ない程の美
しさだった。沢は好きだし岩もいいけどアイスクライミングも結構楽しいかも…と調子のよいことを考
える。みんな陽気にはしゃぎながら登り、最後にグレッグ達が非公式スピードクライミングコンペをし
て終わりになる。センターに戻って、女主人に“楽しかったかい?”と聞かれたので、“もちろん!”
と答えると、ニコライが横から“実際彼女は上手だったよ”と言ってくれた。そうすると、“そりゃそ
うだよ、彼女小さいものね、小さい人は大体上手いよ”と言われ、自分の背の低さを心の底から有り難
いと思う、人生でそう何度も起こると思えない貴重な体験になった。やっぱりアイスクライミングって
いいかも。