花の山旅報告-その3  7月23日 朝日小屋〜朝日岳〜長栂山〜アヤメ平〜黒岩平(朝日小屋から黒岩平往復)

 黒岩平は森に囲まれた湿原だった。起伏にとんだ草原がつづき、林縁には雪田が残り、池塘が点在し、
小川が縦横に流れる何とも心安らぐ空間だった。花も決して派手に咲いているわけではい。ニッコウキスゲ
が林縁に色を添え、ハクサンコザクラや小さなミズバショウが池塘の回りに咲いていた。そして何気なく足
元に目をやると写真のヨツバシオガマが咲いていた。ヨツバシオガマにしては、この風景にとけこむかのよ
うな淡い色合いだった。
 林縁に足を止めると色鮮やかな花があった。これまで図鑑でしか見たことがなかったが、これがオオサク
ラソウであることがすぐわかった。いくつになっても初めて出会う花には感動するものだ。
撮影に夢中になり、少々疲れてしまったので黒岩平という標識のある小さな広場で昼食とした。誰もいない
別天地での昼食は、粗末なものであっても何にもかえがたいご馳走となった。昼食の後、黒岩平を引き返す
ことにした。
 帰路、長栂山の礫地でイブキジャコウソウを再度撮影した。この花や葉を摘んで揉んで匂いを嗅いでみる
と確かに香水の香りがする。しかし、この香りより花の美しさの方が格段に勝るように思う。 
 それからここでチシマギキョウの花も撮りなおした。この花は朝日岳の西斜面にもウルップソウやミヤマ
ムラサキと供に多く咲いていた。ただし、ウルップソウは花期が過ぎていた。
 朝日小屋から黒岩平の往復は、朝日小屋と朝日岳の標高差270m、朝日岳と黒岩平の標高差750m、
合計約1000mとなり、昨日の蓮華温泉からの登りの疲れも取れない身体には少々きつかった。
日も西に傾きかける頃、ようやくガスが晴れてきて白馬岳が姿を現した。写真左から、半分しか写っていな
いが雪倉岳、白馬岳そして旭岳だ。手前の白い点々はチンク゛ルマだが、惜しいことに既に盛期は過ぎて
いた。小屋周辺はまるで山のオアシスのように、樹林に囲まれたチンク゛ルマの草原となっていた。
この風景にどっぷりととけこんで飲んだビールの味は格別だった。 
---------------------------------------------------------------------------------
 朝日岳から栂海新道に向かう人は少ない。少ないといってもここ3,4年、北アルプスから海抜ゼロメートル
の日本海の親知らず子知らずに抜けるのが人気急上昇とか。確かに魅力のコースかも知れない。この2日
間で2パーティが日本海に向かい、2パーティが日本海から槍ヶ岳まで縦走するというパーティに出会った。
どこの山でも中高年登山者に独占されている昨今、体力の限界に挑戦するかのような元気なパーティに出
会うとつい嬉しくなった。
---------------------------------------------------------------------------------

次回は花の山旅報告-その4を報告します。